ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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消費支出の変化・若者の消費動向には、消費支出の内訳の変化も関係していると考えられる。・そこで、若者(30歳未満)の消費支出の変化について、全年代との比較を行うと、「住居」等が大きく増加し、「食料」や「被服及び履物」の減少幅が大きいことが分かる。このうち「住居」については長らく続いた景気低迷等を背景に、企業が社宅を手放したり住宅補助制度を縮小したことの影響が指摘されている(図表6)。・「食料」では、「外食費」において減少が顕著である一方、「調理食品」の消費額が増加している(図表7)。・「被服及び履物」については、「洋服」への支出が、男女とも長期的にみて減少傾向にある。この背景としては、ファストファッション等の、お金をかけなくてもオシャレを楽しめるようなファッショントレンドを取り込んでいる可能性が考えられる(図表8)。図表6 消費支出額の変化消費支出額の変化と増減率(対1989年)(円)若者(単身世帯)全年代(二人以上の世帯)1989年2014年増減率1989年2014年増減率食料40,95433,628△17.9%80,98372,280△10.7%住居22,18940,28881.6%14,47317,66022.0%光熱・水道3,7318,094116.9%15,70520,96733.5%家具・家事用品3,5452,797△21.1%11,90310,136△14.8%被服及び履物15,4666,508△57.9%21,44911,864△44.7%保健医療1,2581,91352.0%8,41912,90753.3%交通・通信23,77924,1961.8%31,92945,13641.4%教育22330737.9%14,52713,387△7.8%教養娯楽21,70222,7084.6%26,76329,1969.1%その他の消費支出20,73417,358△16.3%79,04459,350△24.9%図表7 若者の品目別平均支出額(食料)(千円)020401989949904091419899499040914男女調理食品外食その他食料図表8 若者の品目別平均支出額(洋服)(千円)05101989949904091419899499040914男女洋服SNS等の流行による消費行動の変化・近年の若者の消費動向については、SNS等の流行が影響を与えていると考えられる。・SNSをきっかけとした商品購入やサービス利用の経験の有無について尋ねた調査では、20代以下の若者世代を中心に他世代に比べて高くなっている(図表9)。・一方で、SNSへの投稿を目的とする外食や買物といった消費行動も盛んであることが確認でき、情報の受け手としての消費と情報発信者としての消費という2側面でSNSが影響を与えていることが分かる(図表10)。・また、例えば音楽業界では、ネット上のストリーミングサービスが興隆する中、そのサービス利用をきっかけに実際のライブステージへ人を誘引すること等によりライブ市場も拡大しており、ネットとリアルをうまく組み合わせたビジネスが成長しつつある(図表11)。・このようなSNS等の流行による若者の消費行動の変化を踏まえ、各企業は、インスタ映えと呼ばれるようなSNS受けや、ネットでの体験をリアルでの消費に繋げていくようなマーケティング・製品開発を行っていくことが予想される。図表9 SNSの情報を参考に 購買した経験0510152025303540全体男女(%)15-19歳20代30代40代50代60代70代以上図表10 SNSに写真や動画を アップするためにした行動010203040506070外食旅行(日帰りを含む)買物イベントに参加する(%)15-19歳20代30代40代50代60代70代以上図表11 ライブ市場規模の推移01,0002,0003,0004,0005,0006,0002007080910111213141516ステージ音楽(億円)(注)音楽:ポップス、クラシック、演歌・歌謡曲等ステージ:ミュージカル、演劇、歌舞伎/能・狂言等(年)(出典)総務省「全国消費実態調査」「国勢調査」「労働力調査」、内閣府「国民生活に関する世論調査」、消費者庁「消費生活に関する意識調査」、ライブ・エンタテインメント調査委員会「ライブ・エンタテインメント市場規模」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2018 Sep.75コラム 経済トレンド 51連 載 ■ 経済トレンド

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