ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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コラム 経済トレンド51大臣官房総合政策課 調査員 山下 裕介/杉山 渉/檜山 直稔若者の消費動向本稿では、若者(主に20代~30代前半の人)の消費動向について考察した。若者世帯の消費性向・世帯主の年齢階級別に消費性向の推移をみてみると、シニア世帯(60-64歳・65-69歳)では上昇傾向にあり全年齢平均を上回るようになった一方、若者世帯(25歳未満・25-29歳)では全年齢平均を上回っていたものの足下ではそれを下回っている(図表1)。・世帯主の年齢別世帯数の推移から分かるように、シニア世帯が増加している一方で若者世帯は減少傾向にある。少子高齢化の進行から若者世帯の数は今後も減少していくことが予想されるが、次代を担う若者の動向は日本経済の先行きを見通す上で重要であるため、本稿では若者に焦点を当てることとする(図表2)。図表1 世帯主の年齢別消費性向の推移707580859095100198919941999200420092014平均25歳未満25-29歳60-64歳65-69歳(%)(年)(注)二人以上の一般世帯のうち、勤労者世帯図表2 世帯主の年齢別世帯数の推移01020304050601995200020052010201530歳未満60歳以上その他(世帯数、百万)(年)可処分所得と貯蓄現在高・若者世帯の可処分所得は1989年以降緩やかに増加し、貯蓄現在高も増加基調にある(図表3)。・若者の将来不安について、内閣府が実施している世論調査をみると、「老後の生活設計」を不安に感じる者の割合は若者・全年代共に増加する一方で、「今後の収入や資産の見通し」を不安に感じる者の割合は若者世代で大きく増加していることがわかる。これらより、若者の将来の収入や資産に対する不安が増大し、貯蓄への意識が強まっている様子が窺える(図表4)。・若者の「今後の収入や資産の見通し」を不安に感じている理由の1つとして、若者世代における非正規雇用比率の上昇が考えられる。非正規雇用は相対的に収入水準が低く、雇用も安定しにくいことから若者の将来不安が増大している可能性がある(図表5)。図表3 若者世帯の可処分所得・貯蓄額0501001502000102030198919941999200420092014男性可処分所得女性可処分所得男性貯蓄現在高(右軸)女性貯蓄現在高(右軸)(万円)(万円)(注)世帯主が30歳未満の単身世帯のうち、勤労者世帯(年)図表4 将来不安に関する世論調査102030405060701996199920022005200820112014老後の生活設計について(20-29歳)老後の生活設計について(全年代)今後の収入や資産の見通しについて(20-29歳)今後の収入や資産の見通しについて(全年代)(%)(年)図表5 非正規雇用比率151923273135200220042006200820102012201425-34歳(%)(年)74 ファイナンス 2018 Sep.連 載 ■ 経済トレンド

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