ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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第十回 家計調査の苦労とやりがいニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?3連覇を果たした浜松市を宇都宮市が抜き返した平成29年。毎年ニュースになる餃子の年間支出ランキングですが、この根拠として用いられているのが家計調査です。家計調査は、ファイナンスを読まれている方の多くが関わったことがあるかと思います。様々な経済分析で用いられますし(例:ファイナンス平成30年2月号のコラム経済トレンド「女性の活躍が与える影響について」での共働きと専業主婦世帯の比較)、GDPの推計に用いられる故の影響の大きさとその精度でも話題になりました(平成27年10月の経済財政諮問会議における麻生副総理兼財務大臣の提案を契機として、順次見直しが行われています)。自分自身、様々な場面で思い出のある家計調査。せっかく県庁の勤務の機会を得たので、今回、調査の現場が実際どのようになっていて、どんな苦労とやりがいがあるのか探ってみることにします。統計を支える統計調査員新潟県庁では、219の統計調査を実施しており(平成30年4月1日現在)、うち152が国の統計です。これには、家計調査のほか、メディアで取り上げられる毎月勤労統計調査、労働力調査などの基幹統計が26含まれています。そして、調査の最前線は、統計調査員という特別職の非常勤地方公務員が担います。新潟県での登録者数は約2,260人で、その65%が女性です。年代別では、60代が35%、70代が41%、逆に30代以下は1%と高年齢者中心に担われていることがわかります。主婦の方、会社を退職した方、自営業の方など様々な方が登録下さっています。平成30年度の統計調査全体では延べ約5,000人が携わる見込みで、毎月調査しているものでは労働力調査がもっとも多く延べ1,200人、今年度最も多いのは5年に1度の住宅・土地統計調査の2,000人です。家計調査は、毎月12人×12月で延べ144人が携わります。調査の流れと苦労プライバシー意識の高まりやライフスタイルの多様化により、新潟県でも例に漏れず調査員は苦労しているようです。新潟県では、3自治体、具体的には新潟市、長岡市、魚沼市をサンプル調査しています。調査員1人で2区域を受け持つ形で、3自治体で計24区域を調査することになります。不審者と思われないため、調査前に必要に応じて自治会長や交番に挨拶することもあるそうです(表のア)。そして、調査区域(50-120世帯程度)のすべての世帯を訪問し、世帯名簿を作成します(表のイ)。無作為抽出の信頼性を高めるため、大切なスタートです。空き家と思われる家であっても、隣近所には聞かず、何度も訪問を繰り返し、信頼性を高めるそうです。関係のないことまで当たり散らされ、何十分も足止めされることもあるそうです。長いリードでつながれた犬の存在で呼び鈴まで近づけないといったお約束のような状況もあるそうです。世帯名簿作成後、そこから無作為抽出された7世帯(うち単身世帯1世帯)に調査を依頼します(表のウ)。調査開始一週間前には、家計簿やはかり等の調査用品を渡し、調査の仕方を説明します。えっ、はかり? と思われた方! 写真のように、新潟県総務管理部長(元財務省広報室長)佐久間 寛道72 ファイナンス 2018 Sep.連 載 ■ ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

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