ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
64/92

(2) 国、沖縄県の政策に連動した社会政策的分野への対応(参照:図10)沖縄において特に深刻な状況にある子どもの貧困問題に関して、ひとり親の支援にも取り組んでいる。具体的には、ひとり親の雇用や処遇改善を行う事業者への事業資金やひとり親の学び直しのための教育資金に対する特例金利を適用するほか、ひとり親の創業・新規開業を最優遇金利で支援するといった内容である。また、2百名強の限られた人員の中でやりくりし、本店融資第二部に、専任担当者を配置し、個別融資相談対応のほか、関係機関との連携や融資制度の周知にも取り組んでいるところである。(3)“地方創生”の取組み(参照:図11)地方創生関連では、市町村と「助言業務協定」を締結し、各地域プロジェクトの構想・企画段階から積極的に参画する取組みを鋭意進めている。沖縄公庫に蓄積された地域開発に関する金融ノウハウを基礎的自治体に提供している。これまでに16市町村と協定を締結している。各地域の強みを生かした地域活性化の一助となるべくさらに推進していく予定である。8情報提供サービス沖縄公庫では、沖縄の社会開発・産業経済・企業経営などのテーマについて内外の最新情報の収集分析を行い、調査結果を各種レポートや記者発表等を通じて広く一般に提供している。産業経済調査としては、最近では、「沖縄公庫取引先からみた泡盛メーカーの現状と課題について」(公庫レポート№158・平成30年(2018年)7月)を公表し*7、沖縄の地場産業の代表格である泡盛についての調査は沖縄県内において大きな反響を呼んだ。そのほか、限られた人員の中ではあるが、設備投資計画調査(沖縄における主要企業の設備投資計画の動向を、毎年2回(3月、9月)約250社を対象に行うアンケート調査)、県内主要ホテル稼働状況調査(県内主要ホテルの稼働状況について、調査分析を行うもの)、県内企業景況調査(県内企業の業種別の景気動向を毎年4回、約370社の企業を対象とするアンケー*7) https://www.okinawakouko.go.jp/userles/les/Report_158_01.pdf*8) https://www.okinawakouko.go.jp/ト調査で分析し、県内景気の判断情報として提供しているもの)を行っている。▪おわりに沖縄公庫について、駆け足であるが、その概略を説明した。ご興味を持たれた方は、沖縄公庫のホームページ*8もご覧いただければ幸いである。筆者は、沖縄振興の関係の仕事を担当するようになって3年目となった。沖縄については、様々な歴史的経緯があるほか、文化的にも独特のものが多い。一方、政治社会的な課題も深刻だ。最近、地域振興がらみの仕事をする機会が増えたが、沖縄振興は、「究極の地域振興」と感じる。また、沖縄の現況を踏まえれば、最近の急速な経済の伸長にバランスすべく人的資本投資を含む「社会の開発」の視点が重要である。沖縄公庫に即せば、沖縄公庫独自制度について、「カイゼン」が常に求められていると思料する。ところで、沖縄振興の仕事をしている中で、「万国津梁」という言葉が、今後の沖縄振興でも大きな示唆になるのではないかと思うようになった。万国津梁とは「世界の架け橋」をあらわし、首里城正殿の梵鐘に刻み込まれている銘文にある。遥か14世紀もの昔から、中国や東南アジアとの交易を通して人と文化の架け橋を目指してきた琉球の先人から受け継いだ、熱い志(ミッション)が、21世紀の沖縄でも花開くよう、微力ながら取組みを進めたいものだ。プロフィール渡部 晶(わたべ あきら)沖縄振興開発金融公庫副理事長1963年福島県生まれ。87年京都大学法学部卒、大蔵省(現財務省)に入省。福岡市総務企画局長、財務省地方課長兼財務総合政策研究所副所長、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)などを経て、17年6月から現職。「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラムを掲載中。出身の福島県いわき市の応援大使を務める。沖縄経済については、毎日新聞オンライン「経済プレミア」(https://mainichi.jp/premier/business/)で、昨年10月より月1回「素顔の沖縄けいざい」を連載。60 ファイナンス 2018 Sep.SPOT

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る