ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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5沖縄の地域特性(県内金融構造) (参照:図7)ここで、沖縄県内の金融構造について少し触れておきたい。沖縄にはメガバンクは1店舗のみで、信用組合がなく、地銀、第2地銀等の果たす役割は大きい。特に貸出金では、コザ信金を含めた県内4行庫で7割のシェアを占める。一方、民間資金量は、本土の水準からすれば見劣りする状況である。また、地銀の貸出平均約定金利は、本土に比べて高い状況にある。事業資金の調達環境としては、本土との格差があることは否めない。沖縄公庫においては、沖縄の事業者に良質な資金を供給するという政策金融の役割をはたして、民間金融を質・量の両面で補完することとしている。6民間金融機関との連携(参照:図8)民間金融機関との連携については、昨年9月15日に開催された沖縄振興開発金融公庫運営協議会における沖縄県銀行協会会長からの意見を踏まえ、内閣府の指導の下、昨年11月に民間金融機関との意見交換会*6) 駐留軍用地跡地への投資効果の発現には、事業開始から長期を要し、公共投資のほかにも各種の民間による投資が必要であることなどに留意すべきである。この点で、頻繁に結果のみ引用される沖縄県の委託調査「駐留軍用地跡地利用に伴う波及効果等検討調査報告書」(平成19年(2007年)3月)がある。この報告に直接あたると、「プラスの効果として計測される直接的経済効果分(地区内の商業・サービスの売上額等)は県内他地域からの移転分が含まれる」との言及がある。その経済効果の測定については慎重を期する必要を感じる。を開催した。また、同年10月には、沖縄公庫と各金融機関との間で連絡窓口を設置し、個別事案について相互確認や意見交換を行う体制を構築した。民間金融機関との協調・連携については、協調融資商品の検討などを進めているが、沖縄の金融環境を踏まえつつ、沖縄振興に資するよう、その歩みを進めていきたい。7最近の主な取組み(1) 駐留軍用地跡地の有効利用(独自融資制度の拡充)(参照:図9)沖縄における広大な駐留軍用地跡地の有効利用は、沖縄経済の振興における大きな課題である。沖縄公庫では、平成4年(1992年)以降、沖縄本島内4地区(那覇・小禄、那覇・新都心、北谷町・ハンビー・美浜、北中城村・アワセゴルフ場跡地)において、約1700億円の資金を供給した。沖縄公庫の政策金融評価報告書(平成29年度(2017年度))においては、雇用効果を約9千人と試算している*6。図7 沖縄の地域特性/県内金融構造【貸出約定平均金利(沖縄と全国:ストック長期金利ベース)】○資金量と融資量⇒全国は総融資量に対し民間資金量が潤沢 沖縄は総融資量と民間資金量がほぼ同水準○民間金融機関の業態構成~県内は地銀が牽引~⇒県外金融機関の関与が極めて限定的、地銀が都銀機能を代替○本土より高い金利水準⇒地銀行の金利水準は全国比0.481%高(平成28年(2016年))(単位:%)【沖縄の預貯金・貸出金市場の業態別シェア】【金融機関資金量・融資量の名目GDP比率】0.00.51.01.52.02.53.0昭和474951535557596163平成246810121416182022242628(倍)(年度末)注:県内4行庫は、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫の計。その他は県内に所在する中小企業金融機関、農林水産金融機関等を含む。資料:日本銀行、(社)全国労働金庫、(株)ゆうちょ銀行、各行ディスクロージャー誌の資料等を基に沖縄公庫作成資料:日本銀行、沖縄公庫民間資金量(全国)総融資量(全国)民間資金量(沖縄)総融資量(沖縄)民間融資量(沖縄)沖縄公庫融資量県内地銀・第二地銀(3行)全国地銀0.51.01.52.02.53.0202122232425262728年(%)平成19都銀県内4行庫ゆうちょ銀公庫その他預貯金貸出金平成24年度平成28年度差(H28-H24)全国(28年度)平成24年度平成28年度差(H28-H24)全国(28年度)n.a.71.011.1―17.9n.a.71.010.6―18.3―▲ 0.0▲ 0.5―0.423.230.911.2―34.6n.a.65.7―20.813.5n.a.70.8―16.612.6―5.1―▲ 4.2▲ 0.927.745.3―5.621.358 ファイナンス 2018 Sep.SPOT

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