ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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(3)復興状況震災から7年半が経過し、多くの方々の尽力により東松島市の復興は進んでいます。市内の津波被災エリアの世帯(172.6ha)を、市内7箇所の防災集団移転地(内陸部や高台)へ集団移転を実施したほか、災害公営住宅17団地1,101戸の整備も2018年度中の完了見込みとなっています。産業については、基幹産業である農業漁業の施設は9割近く復旧した一方、奥松島を含めた観光入込客数については、民宿施設の半減や野蒜地区の復旧の遅れもあり、震災前の6~7割程の回復に留まっています。復興のために、全国の自治体から派遣職員(県・市から累計319人)、企業・個人からの寄附金や物資に留まらない様々な支援、海外からの支援等、国内外を問わず多くの方々の温かい支援を頂いています。今は2020年度末の復興期間終了を目指し市民・職員が一丸となって復興を進めています。2 市の課題(1)人口減少現在、地方創生担当として人口減少問題に取り組んでおりますが、前述の通り現時点では本市の人口は横倍状態であり、近隣市町と比較してもかなり良い部類となります。しかし、少子高齢化に加え、震災による人口減少、働く場所の喪失に伴う若者の流出等により、2040年には人口が3万3,000人になると推計されています。また、働き手の人口減少に伴う、各分野での担い手不足も大きな課題となっています。具体的には、担い手が少ないために行政各分野から依頼する際には特定の人に依頼が集中する傾向があります。地方都市の課題は、資金面よりも「新しい取組みを始められる若い世代の担い手が、そもそもいない(少ない)」ことにあり、人材育成のみで解決できる問題ではありません。これらの課題を解決するため、「移住定住」「しごとの創出」を進める必要があります。(2)復興の完結に向けて住まいの復旧は進んでいるものの、依然として課題は山積しています。ア) 被災元地と呼ばれる集団移転した元地のうち31haが未活用市内で被害の大きかった野蒜地区や立沼・牛網地区において、被災元地が虫食い状態で残っており、活用方法が決まっておりません。災害危険区域でもあるため、土地の活用方法に制約があり、今後復興期間中に活用の見通しがつくか不透明な状況です。他の沿岸被災地も集団移転元地に同様の問題を抱えていると聞いており、解決すべき課題となっています。イ)自治体派遣職員の帰任後の市役所の業務について現在は市職員392名に加えて全国の自治体からの派遣職員49名により、事業が進められているものの、復興期間終了により自治体からの派遣職員はゼロとなる見通しとなっています。復興期間後にも役所としての業務を継続していくために、如何に影響を少なく体制移行できるかが課題となっています。ウ)観光分野の未回復震災前には112.3万人の観光客が東松島市を訪問していたものの、2017年度は68.7万人に留まっています。野蒜地区にあった「かんぽの宿」が撤退したこと▲防災集団移転団地と移転促進区域(被災元地を含む) ファイナンス 2018 Sep.49地方創生の現場から【第5回】

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