ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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前大臣官房政策金融課 富永 隼行/寒川 翔平/服部 大樹*15月号及び6月号の特集では、政策金融の意義と取組について概観してきたが、本稿では、その番外編として、株式会社日本政策投資銀行*2(以下、「政投銀」という)の女性起業支援に向けた取組であるDBJ女性新ビジネスプランコンペティション(以下、「DBJ女性コンペ」という)を紹介する。1女性起業支援の意義産業構造の転換と人口の高齢化、女性の高学歴化、性別役割分業意識の変化に加え、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、女性活躍推進法等の法令整備による制度改革もあり、女性の労働を取り巻く社会環境は大きく変化した。この結果、女性の労働参加は飛躍的に拡大し、女性の就業率はこの十数年で10%以上上昇し、2017年に67.4%に達した(図表1)。女性活躍の推進が経済に与える正の影響については、既に様々な研究成果*3によって示されており、女性の労働*1) 本稿の意見にわたる記述は、筆者の個人的な見解である。*2) 出資と融資を一体的に行う手法や、その他の高度な金融手法を用いた業務を営むことにより、長期の事業資金を必要とする者に対する資金供給の円滑化や、金融機能の高度化に寄与することを目的とする株式会社。*3) 例えば、山口(2017)の中で、女性の活躍と労働生産性の関係についての詳しい分析がなされている。*4) 日本政策金融公庫総合研究所, 2013, 「女性起業家の開業~「2013年度新規開業実態調査(特別調査)」の結果から~」*5) 女性起業家は、一般消費者向け、とりわけ女性を主な顧客とする事業を選ぶ傾向がある。また、女性を多く雇用し、「仕事と家庭の両立」に配慮した取組を行っている割合が高い。参加に向けての動きは今後さらに加速していくものと考えられる。特筆すべきは、経済の最前線で中心的な役割を担う女性の数が徐々に増えてきていることである。例えば、我が国の上場企業の女性役員は、役員全体に占める社外取締役の割合の増加等に後押しされ、ここ10年でその割合が約3倍となっている(図表2)。また、起業家数の女性割合についても、1999年から2017年にかけて、約1.5倍になっている(図表3)。日本政策金融公庫総合研究所が実施した調査*4によれば、女性の起業家は男性の起業家に比べて、女性消費者のニーズや女性雇用の受け皿となっている傾向*5があるという。本調査は、女性活躍の好循環の形成や働き方改革の推進をしていくという意味でも、女性起業家の数が増えることが好ましいことを示唆している。これらを背景として、政府は、持続的な経済成長の実現のための最重要課題である潜在成長率の引上げに日本政策投資銀行の女性起業支援に向けた取組について~DBJ女性新ビジネスプランコンペティション~図表1:男女別就業率推移57.0%67.4%80.5%82.9%40.0%45.0%50.0%55.0%60.0%65.0%70.0%75.0%80.0%85.0%90.0%20010305070911131517女性就業率男性就業率(年)注1:総務省「労働力調査」より筆者作成注2:ここでいう就業率とは、生産年齢人口(15~64歳の全ての男女)のうち、就業している者の割合を指す34 ファイナンス 2018 Sep.SPOT

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