ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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(注)税収の上振れ(当初予算*8を上回ること)の主な要因は、(1)GDP(フロー)の伸びに連動しにくいもの(配当税収(企業の資本政策に影響)、株式譲渡税収(ストック価値に影響)など)*9(2)景気回復局面における一時的なもの(法人の繰越欠損金解消による課税ベースの拡大など)に大別される。GDP(フロー)の伸びに連動しやすいもの(給与税収、消費税収)は、当初予算から大きな乖離なく推移しており、今後、繰越欠損金の解消効果が逓減していく中、税収(配当及び株式譲渡を除くベース)は経済成長と整合的な形で増加していくものと思われる。329年度限りの一時的な押し上げ29年度予算を+1.1兆円上回ったうち、29年度限りの一時的な押し上げは+0.4兆円程度と見込まれ、その内訳は以下のとおりである。これを除くと今後の税収増に寄与する分(土台増)は+0.7兆円程度になるものと見込まれる。*10*8) 毎年度の予算編成における税収見積りは、その時点までの課税実績や政府経済見通しの諸指標等を基礎として個別税目ごとに積み上げて行っている。*9) 上場企業の配当や株価の水準は、海外子会社の損益も反映した連結決算をベースに判断する流れとなっていることからも、配当税収や株式譲渡税収はGDPの伸びに連動しにくいといえる。*10) 「中長期の経済財政に関する試算」との関係では、29年度決算税収が(予算での見込より)増加した分は、30年度以降の税収を増加させる一つの要因となりうる。一方、さらなる税収増が実現できるかどうかについては、今後、「成長実現ケース」が想定している成長パス(名目3%超)をどこまで達成できるかにもよる。*11) 親会社が子会社から受け取る配当に源泉所得税が課されるが、当該所得税額は、法人税の前払いとして、親会社の確定申告の段階で法人税額から控除される。親会社が持株会社である場合は法人税を納付していないことから、当該所得税額を控除し切れないため、還付されると見込まれる。当該還付は、配当に係る所得税が源泉徴収された年度の翌年度に生じる。*12) 上場株式等の譲渡益について、源泉徴収口座(特定口座)に係る税額は、暦年単位で計算される。昨年末時点で29年度の株式譲渡税収を1.0兆円と見込み、これを基に30年度の株式譲渡税収を同程度と見積もっている。*13) 輸入消費税は、仕入税額控除により、確定申告の段階で売上税額から控除されるが、国の決算時期と企業の決算期が異なることにより、輸入消費税の仕入税額控除が翌年度にずれ込む。29年度は年度後半にかけて輸入額の伸びが強まったため、輸入消費税が年度内に仕入税額控除し切れなかったと見込まれる。〈所得税:+0.3兆円程度〉▲好調な企業業績を背景に、子会社から持株会社への配当支払いが増加したが、これに係る源泉所得税は翌年度に還付される(+0.1兆円程度)。*11▲株価が昨年末にかけて連騰して大きく上昇したが、年明け、世界同時株安のあおりを受けて一旦下落した。その後、若干回復したが、年始の高値に戻っていない(+0.2兆円程度)。*12〈消費税:+0.1兆円程度〉▲資源価格の上昇につれて、年度後半にかけて輸入額の伸びが強まったため、輸入消費税が年度内に仕入税額控除し切れない。*13(参考2)29年度決算税収と30年度税収への影響28年度(決算)55.5兆円予算での見込57.7兆円58.8兆円+1.1兆円+1.4兆円+2.2兆円土台増 +0.7一時的な押し上げ +0.4当初予算59.1兆円29年度(決算)30年度(参考1)29年度一般会計税収(兆円)28年度29年度決算額(1)予算額(2)決算額(3)対28決算(3)-(1)対予算(3)-(2)所得税17.617.918.9+1.3+0.9給与10.911.411.3+0.4▲0.2(注)配当3.73.74.2+0.5+0.5株式譲渡0.60.61.0+0.4+0.3法人税10.312.412.0+1.7▲0.4(注)消費税17.217.117.5+0.3+0.4その他10.310.210.4+0.1+0.2一般会計分計55.557.758.8+3.3+1.1(注)29当初は28補正後を基に見積もり。28補正後から28決算は給与税収▲0.1兆円、法人税▲0.8兆円の減。30 ファイナンス 2018 Sep.SPOT

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