ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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(1)旺盛な外需により自動車や機械の輸出が拡大したこと(特に輸送用機器、機械)(2)素材の市況回復によりマージンが改善したこと(特に化学、鉄鋼)(3)建設やインバウンド関連を中心に内需が堅調であったこと(特に建設、陸運)(4)内外の株高等により資産運用が好調であったこと(特に保険)これらの業種大手は、過去の繰越欠損金をほぼ解消しており、企業業績の増益が法人税収の増加に繋がりやすい。こうした基本的な構図の下、本業の稼ぎが好調なことに加え、運用環境の改善も追い風となり、法人税収が大きく増加した。*4予算との比較では、29年度予算(12.4兆円)は28年度補正後予算(11.1兆円)を基に見積もったが、28年度補正後予算から28年度決算は▲0.8兆円の減(年明け以降、為替が円高方向に推移したことにより、企業業績が伸び悩んだ)となったため、▲0.4兆円下回った。なお、前年度から+1.7兆円の増加となったが、特殊要因(大口還付)の剥落(+0.5兆円)、子会社からの受取配当の影響(+0.2兆円)*5を除けば+1.0兆円程度の増加となる。〈消費税〉※税収全体の約3割消費税は17.5兆円の見込みであり、前年度から+0.3兆円の増加となり、予算を+0.4兆円上回った。*6個人消費の持ち直しに加え、資源価格(特に原油価格)の上昇による輸入増に伴い、輸入消費税が大きく増加したことによる。個人消費の動向を見ると、民間最終消費支出は対前年度比+1.2%の増であり、28年度(同▲0.2%)から持ち直している。財貨・サービスの輸入は対前年度比+11.6%の増であり、3年ぶりに増加に転じている。品目別の輸出入動向をまとめた貿易統計(通関ベース)によると、*4) そのほか、製造業では、電気機器が大幅に増益したが、過去の繰越欠損金を抱える企業が多い。非製造業では、商社が大幅に増益したが、収益の大半である海外子会社からの配当は益金不算入である。このため、法人税収の増加に繋がらない。*5) 子会社が親会社に配当金を支払う場合、当該配当金は、翌期の親会社の利益に計上されるため、当該配当金に係る源泉所得税額の法人税額からの控除も翌期にずれ込む。このため、29年度は申告税額の伸びが申告所得の伸びを上回ったものと見込まれる。これは、法人税収に影響するが、配当税収を含む税収全体に影響しないため、後述の29年度限りの一時的な押し上げには寄与しない。*6) 予算との比較では、29年度予算(17.1兆円)は28年度補正後予算(16.8兆円)を基に見積もったが、28年度補正後予算から28年度決算は+0.4兆円の増となったため、+0.4兆円上回った。*7) 例えば、27年度税制改正では、27・28年度において法人税の先行減税を行った(▲0.2兆円)。29年度の輸入は原粗油、液化天然ガス等の品目が増加しており、金額で+13.6%増(4年ぶりの増加)、数量で+3.3%増(2年連続の増加)であった。また、財貨・サービスの輸出は対前年度比+10.3%の増であり、3年ぶりに増加に転じている。(注)消費税収の構成を見ると、国内取引に係る収納(国税庁分)が17.5兆円(対前年度+0.2兆円)、輸入取引に係る収納(税関分)が4.9兆円(同+0.5兆円)、輸出等に係る還付が▲4.9兆円(同▲0.4兆円)であった。収納額全体が22.4兆円(対前年度+0.7兆円)となり、対前年度比+3.2%の高い伸びとなったことは、後述のとおり、輸入消費税が年度内に仕入税額控除し切れないことによる。〈その他〉その他の税目は10.4兆円の見込みであり、前年度から+0.1兆円の増加となり、予算を+0.2兆円上回った。大きく増減した税目は以下のとおりである。◇相続税は2.3兆円の見込みであり、前年度から+0.2兆円の増加となり、予算を+0.2兆円上回った。株価上昇等により財産価格が増加したことによる。◇たばこ税は0.9兆円の見込みであり、前年度から▲0.0兆円の減少となり、予算を▲0.1兆円下回った。紙巻きたばこの販売が減少し、加熱式たばこの販売が増加したことによる。◇関税は1.0兆円の見込みであり、前年度から+0.1兆円の増加となり、予算を+0.1兆円上回った。牛肉等の肉類の輸入が増加したことによる。このように、29年度決算税収は前年度から+3.3兆円の増加となったが、このうち、法人税の特殊要因(大口還付)の剥落(+0.5兆円)、制度改正によるもの(+0.2兆円)*7、ストック価値の影響を受けるなどGDPの伸びに連動しにくいもの(株式譲渡、配当、相続税:+1.0兆円)が含まれており、これらを除くと前年度から+1.6兆円の増加となる。 ファイナンス 2018 Sep.29平成29年度決算税収についてSPOT

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