ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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前 主税局総務課主税企画官(歳入・地方税) 西村 聞多平成29年度決算概要(見込み)が30年7月4日に公表された。以下、平成29年度決算の歳入面のうち、税収の概要について紹介する。1ポイント29年度決算税収は58.8兆円であり、基幹3税(所得税、法人税、消費税)*1が3年ぶりにそろって増収し、前年度から+3.3兆円の増加となった。29年度予算(57.7兆円)*2との比較では、所得税及び消費税を中心に+1.1兆円上回った。このうち、29年度限りの一時的な押し上げは+0.4兆円程度と見込まれる。これを除くと今後の税収増に寄与する分(土台増)は+0.7兆円程度と見込まれる。2主要な税目〈所得税〉※税収全体の約3割所得税は18.9兆円の見込みであり、前年度から+1.3兆円の増加となり、予算を+0.9兆円上回った。給与の堅調な伸びに加え、好調な企業業績を反映して配当や株式譲渡が大きく増加したことによる。【給与】〈源泉分・申告分〉給与税収は11.3兆円の見込みであり、前年度から+0.4兆円の増加となった。予算との比較では、29年度予算(11.4兆円)は28年度補正後予算(11.0兆円)を基に見積もったが、28年度補正後予算から28年度決算は▲0.1兆円の減となったため、▲0.2兆円下回った。雇用・所得環境を見ると、名目雇用者報酬は対前年度比+2.3%の増であり、雇用者数(対前年*1) 所得税、法人税、消費税の基幹3税で一般会計税収全体の8割強を占めている。*2) 昨年末の時点で、29年度税収は、所得税は配当税収及び株式譲渡税収が増加する一方、法人税は当初予算より下振れることが見込まれており、全体として当初予算から大きな乖離は生じないと見込まれたため、補正を行わないこととした。*3) 3月期決算法人は法人税収全体の約6割を占めている。但し、連結決算は海外子会社の損益が反映されるため、連結決算の好調が法人税収の増加に必ずしも繋がらない。度比+1.5%)と一人当たり雇用者報酬(対前年度比+0.8%)がともに増加している。【配当】〈源泉分〉配当税収は4.2兆円の見込みであり、前年度から+0.5兆円の増加となり、予算を+0.5兆円上回った。企業収益が過去最高を更新する中、コーポレート・ガバナンス改革を受けた株主還元強化の動きと相まって、上場企業の配当総額は過去最高となっている。【株式譲渡】〈源泉分・申告分〉株式譲渡税収は1.0兆円の見込みであり、前年度から+0.4兆円の増加となり、予算を+0.3兆円上回った。好調な企業業績を支えに、日経平均株価が26年ぶりの高水準を回復し、株式売買が活発化している(日経平均株価:28年平均16,920円⇒29年平均20,209円)。〈法人税〉※税収全体の約2割法人税は12.0兆円の見込みであり、前年度から+1.7兆円の増加となった。旺盛な外需や堅調な内需などを背景に、企業業績が大幅に増益したことによる。上場企業の2018年3月期決算(連結)*3を見ると、経常利益は対前期比+16.9%(中間予想+11.6%)、最終損益は対前期比+34.6%(中間予想+17.1%)であり、年明け以降、業績予想の上方修正が相次いだ(増収増益)。法人税収が前年度から大きく増加したことには以下の4つの要因があると分析している。平成29年度決算税収について28 ファイナンス 2018 Sep.SPOT

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