ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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展により、税関は、これからコンテナ単位でなく、小さな小包単位で貨物を見ていく必要があり、かつ、開披せずに検査する技術を発展させないといけない。貨物の画像をAIで分析するなど効率的な手法の検討を進め、電子商取引による貨物の増加に対応していく必要があります。更に、ブロックチェーンの活用が挙げられます。これまで税関はサプライチェーンの参加者間をバケツリレー方式で送られてくるデータを受けてきましたが、必ずしも正確な情報をタイムリーに受け取っているとは言えない状況です。ブロックチェーンが貿易サプライチェーンに応用されれば、分散型台帳(distributed ledger)を活用して、税関が途中で改ざんされにくい情報にリアルタイムでアクセスすることも技術的には可能になります。この技術の活用に今や各国が取り組んでいます。WCOは税関協力が中心ですが、情報の交換は税関協力の根幹であり、テクノロジーはその基盤を提供するものです。(馬場)日本税関としてもAIや先端技術の重要性を認識し、既にその利活用について検討・対応を進めていますが、更にその取り組みを進めていく必要があると考えています。(御厨氏)各国とも政府と民間部門が一緒になって取り組まないと、テクノロジーの波に乗り遅れてしまうと思います。(馬場)日本税関もR&D機能を更に強化する必要性を感じています。また、港湾ではAIを使ってのコンテナヤードの動線の最適化などが検討されていると報道にありましたが、サプライチェーン全体の効率化に向け、関係省庁とも更に連携して取り組んでいく必要性も感じています。(御厨氏)先端分野への対応については、税関においてもヒューマンリソース(人材)面での対応が課題になるでしょう。今後の税関職員の任用において、どのような資格・資質が求められるか見直す必要があります。日本税関は理系も採用していますが、今後どういう人材を採用するか、どういうキャリアパスが必要かということを考えていかなければならないでしょう。WCOは各国税関のトップマネジメントの意識改革のために、これだけは知っておかなければならないという「IT Guide for Executives」を作成しましたが、今後はITに対応した人材育成全般を検討しなければならないと考えています。7月に出張したインド税関では、各地の税関職員によるデータ分析の競技会を行っていました。先進国の税関職員も、ITの知識を高めて、仕事にどう活用できるのか自ら考える時代になって来ました。(馬場)6月にペルーでのWCO・ITカンファレンスに出席し、各国税関がAIやブロックチェーンなど先端技術の活用にまだ試行錯誤の段階ではあるものの積極的に取り組んでいることがよく分かりました。とりあえずやってみよう、が重要だと思いました。最後に、国際機関のトップとして、現在の日本税関をどう見られていますか。(御厨氏)日本税関は、(制度の企画・立案の機能を持たない)執行だけの税関と違い、政策立案の機能も有しているため、WCOの会議で政策の検討を行う際な写真(5)WCO選挙関係者と写真(4)WCO総会投票日のレシービングライン26 ファイナンス 2018 Sep.SPOT

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