ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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て、「Borders Divide, Customs Connects」という連結性を税関のモットーにしました。各国に出張して財務大臣を始めとする政府首脳に面会する機会が多いのですが、このモットーを使いながら税関の使命を説明すると、歳入確保に留まらない幅広い税関の守備範囲、そして税関の近代化やそれに伴う予算定員配分の必要性を理解していただけることが多くなりました。歳入徴収、経済競争力向上、国民の保護の三分野に能力増強(キャパシティ・ビルディング)を加えて4つのゴールにして、上記のモットーをビジョンとしたものを2013年にWCO戦略プランとして策定しました(図2)。この四分野で次々と政策ツールを策定すると共に、各国がこうした政策ツールを実施するための支援策も含む政策パッケージとして打ち出し、税関が出来る貢献を見える形にしました。戦略プランは環境の変化に応じて改定されていくものですので、社会のデジタル化の進展に応じて、5番目のゴールとして、デジタル税関をあとから挿入し、情報交換を含む税関間やその他官庁との協力を前面に打ち出しました。税関実務のIT化を図ることは当然ですが、今はデジタル化の結果得られるようになった膨大なデータをどう税関で活用すべきかを考えています。(馬場)常に時代の変化を先読みして行動する必要があるということですね。(御厨氏)国際機関のトップに求められるのはその時々に応じた政策課題を設定して、ビジョンを明確にすること、またそれを的確に発信することだと思います。こうした観点から世の中に求められていることを常に考え、それに合わせたグローバルな政策パッケージを毎年打ち出してきました。地域的にもそれぞれの実情やニーズに合わせた対応をする必要があります。例えば、アフリカでは内陸国が多いので貨物を陸揚げした国から仕向け国までトランジットとして貨物を輸送する必要があります。そこで通過する陸の国境に接する両国間の物理的及び手続面のインフラ整備や商業データの交換も含んだガイドラインを昨年設定し、現在その実施の支援を行っています。また自由貿易地域や関税同盟といった地域統合の動きにも対応した施策も多数実施してきました。図2 戦略プランWCO Strategic Plan24 ファイナンス 2018 Sep.SPOT

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