ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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聞き手:財務省関税局税関調査室長 馬場 義郎本年6月30日、ベルギー(ブリュッセル)で開催された世界税関機構(WCO:World Customs Organization)総会において、次期事務総局長選挙が行われたところ、日本政府が擁立した現事務総局長である御厨邦雄氏が、総会メンバーによる選挙の結果、再選された。三期目の任期は、2019年1月1日から2023年12月31日までの5年間である。今般、御厨事務総局長が一時帰国した機会を捉え、選挙の勝因や、デジタル化の進展等の税関を取り巻く情勢が変化する中でのWCOの今後の取組み等を伺った。(収録:8月2日。)(馬場)この度のWCO次期事務総局長選挙での当選おめでとうございます。(御厨氏)ありがとうございます。(馬場)ファイナンス読者のために、まず、WCOがどのような組織であるか簡単に教えてください。(御厨氏)WCOは税関関連の唯一の国際機関で1952年に設立され、日本を含む世界182か国・地域が加入しています。本部はベルギーのブリュッセルにあり、本部の職員数は約200名です。税関制度の調和・統一と税関行政の国際協力の推進による国際貿易の発展への貢献を目的としていますが、特に2001年の米国同時多発テロ以降はセキュリティ面にも力を入れています。(参考:WCO概要(図1))(馬場)今回の選挙はどういう選挙でしたか。(御厨氏)今回は立候補が二名であり、スペイン候補との一騎打ちでした。彼女はスペインの関税局長を6年間勤めて来た経験があり、EU統一候補としてEUの強力なバックアップの下で積極的な選挙運動を展開しました。またスペイン語圏の中南米諸国の心情的な支持を集めやすいという点で、手ごわい候補でした。日本の勝因は三点あると思います。一つ目は、日本政府が、総理や財務大臣・外務大臣の外国首脳などとの面会の場での支持要請、在外公館大使や外務省による支持要請、財務省関税局幹部による支持要請など、政府を挙げて様々なレベルでの支持要請活動を行ったことです。私は現職であり、積極的には動きづらい立場でしたので、とても助かりました。二つ目は、単に「お願いします」の連呼ではなく、181か国の情報を丹念にまとめ、分析し、各国の事情に応じたきめ細かな支持要請戦略を採ったことです。日本のWCOへの任意拠出金による途上国税関職員を対象とした人材育成プログラムや長年にわたる日本税関の諸外国への技術協力も力を発揮しました。また、WCO事務局などで活躍した日本の税関職員と諸外国との人的ネットワークも強みでした。これらを通じ、日本税関への信頼の確立や、情報収集体制の構築ができていました。この二つにより、個々の国に対して、直接、効果的に働きかけ、メッセージを伝えることができました。データ時代の現代に相応しい、データ分析に基づいた世界税関機構(WCO) 事務総局長 御厨邦雄氏  次期事務総局長選挙を終えて写真(1)麻生大臣と ファイナンス 2018 Sep.21SPOT

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