ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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益にもならず、自由で公正なルールに基づく貿易を通じて世界経済の成長を高めていくことが非常に重要である旨の発言を行った。2仕事の未来本年のアルゼンチン議長下では、優先分野の一つとして、技術革新が経済や雇用に与える影響を取り上げており、これを「仕事の未来(Future of Work)」と呼んでいる。今回の会議では、技術変革を取り入れるに際して、その便益が広く共有されることを確保し、技術変革によって個人、事業及び政府にもたらされる課題に取り組むこととされ、「仕事の未来のための政策選択メニュー」が支持された。3インフラアルゼンチン議長下でのもう一つの優先分野として、インフラストラクチャー投資の推進が挙げられている。今会議では、「インフラ投資をさらに押し上げるとともに、成長と発展を支えるための『インフラを投資対象とするためのロードマップ』の進展が歓迎」された。麻生大臣からは、インフラをアセットクラスとして確立するために、投資家にとって魅力のあるプロジェクトをつくるということが重要であることを述べた。さらに、インフラをアセットクラスとするためにも、インフラ投資の質の高さが重要であるということを強調し、質の高いインフラ投資というものが、包摂的な成長を持続させるということなどを指摘した。4国際金融アーキテクチャ麻生大臣からは、IMFのクォータ改革については、借入資金の果たす重要な役割を反映すべきという日本の立場を主張した上で、加盟国間の意見に隔たりが残っていることからIMFで議論を継続していくべき旨、発言した。会議においては、「強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心としたグローバル金融セーフティーネットの更なる強化へのコミットメント」が再確認された。資本フローの監視及び資本フローに伴うリスクの管*1) FSBにより、法定通貨であるとの誤解を避けるため、暗号及び分散型台帳等で構成される民間金融資産全体を指し「暗号資産」の用語を用いるよう整理された。理に関する取組は、日本がG20等においてその強化の重要性を主張してきた。今回の会議においては、「3月に合意した取組を引き続き進めていく」ことが確認された。麻生大臣からは、資本フローの管理政策の適否を整理したIMFの作業を歓迎し、さらなる事例の蓄積を期待する旨、発言した。低所得国の債務問題に関しては、麻生大臣から、低所得国における債務の積み上がりに対する懸念を表明し、債務の透明性向上を通じた持続可能性確保のためには、借り手、貸し手、相互の取り組みが不可欠であると発言した。会議においては、「債務の透明性及び持続可能性の向上や、債務者及び公的・民間双方の債権者による持続可能な金融慣行の改善に向けて取り組む」ことが確認された。5金融セクター金融セクター改革に関しては、「金融システムは引き続き、開かれ、強靭で、成長を支えなければならない」こと、「金融危機後の規制改革の完全、適時、かつ、整合的な実施及び最終化と、その影響の評価を行うことにコミットすること」、及び「金融システムにおいて生じつつあるリスク及び脆弱性を引き続き監視し、必要に応じ対処する」ことが確認された。仮想通貨に関しては、3月の会議で「暗号資産*1」と定義され、それが「ソブリン通貨の主要な特性」を欠いていると指摘されたが、今回の会議において、「現時点でグローバル金融システムの安定にリスクをもたらしていないものの、引き続き警戒を続ける」ことが合意された。麻生大臣からは、技術革新は金融システム及び広く経済に重要な便益をもたらし得る一方で、暗号資産に関しては、消費者及び投資家保護、市場の健全性、脱税、マネロン・テロ資金供与などに関する問題や金融システムの安定への潜在的なリスクを考えて、FSBなどの基準設定主体に対してリスクを監視し、多国間での対応について評価するため、さらなる作業を期待するとともに、FATFに対して今年10月にFATF基準がどのように適用されるか明確にすることを求める旨、発言した。 ファイナンス 2018 Sep.19G20ブエノスアイレスの概要SPOT

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