ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
22/92

国際機構課長 緒方 健太郎/課長補佐 瀧村 晴人/企画係長 西岡 凌2018年7月21日~22日にかけて、アルゼンチン・ブエノスアイレスにて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G20」)が開催され、日本からは麻生副総理兼財務大臣と黒田日本銀行総裁が出席した。2日間にわたり、世界経済、インフラ、低所得国の債務問題、暗号資産、国際課税など多岐にわたり議論が行われた。今回のG20では、貿易等に関する議論への世間の注目も高まる中で、日本としても積極的に議論に貢献し、マクロ経済政策や為替について、G20のこれまでのコミットメントを再確認することができた点が大きな成果である。本稿では、主な議論の概要を紹介したい。参考1)参加国・国際機関(ア)G20:G7(日本、カナダ、仏、独、伊、英、米、EU)、アルゼンチン、豪、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、露、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ(イ)招待国:チリ、オランダ、シンガポール、スペイン、スイス(ウ)国際機関:東南アジア諸国連合(ASEAN)、アンデス開発公社(CAF)、金融安定理事会(FSB)、グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、米州開発銀行(IDB)、国際決済銀行(BIS)、世界銀行(WB)、金融活動作業部会(FATF)、国連(UN)1世界経済今回のG20は、世界経済が引き続き堅調に推移する一方、新興国経済の金融脆弱性や、貿易関係の緊迫化というリスクが強く認識される中で開催された。麻生大臣からは、先進国で金融政策の正常化が徐々に行われつつある中で、中国を含めた新興国における通貨下落が資本流出圧力を招き、世界金融市場のリスクとなり得る点についての懸念を指摘した。さらに、保護主義が伸長する背景にも取り組んでいく必要があるということ、及び構造的な成長の停滞や格差問題に対処するため、必要な構造改革を着実に実施していくベきであるということを主張した。加えて、経常収支の過剰なインバランスの解消は、二国間ではなく多国間で解決すべきものであり、関税の賦課等による調整ではなく、貯蓄や投資のバランスといったマクロ経済政策や構造改革によって対応を行うべき点を主張した。加えて、日本政府が新たな経済・財政再生計画を決定したことで、財政の健全化目標として2025年の国・地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を目指すということを掲げたことを報告し、後がないという危機感を持って計画に沿った歳出改革に真摯に取り組むということで、この目標の達成を確かなものにしていきたいことを述べた。また、同時に決定した成長戦略を含めた方針に基づいて日本が直面する喫緊の課題である少子高齢化に立ち向かっていきたいという決意を併せて発言した。議論の結果、会議後発出されたコミュニケ(共同声明)において、前回のG20サミット(本年3月亜・ブエノスアイレス)に続き、マクロ経済政策に関しては、金融・財政・構造政策の「全ての政策手段を用いる」こと、為替に関しては、「為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうる」ことが再確認された。また、貿易に関しては、「ハンブルク・サミットでの貿易に関する首脳の合意を再確認」するとともに、「リスクを緩和し信認を高めるための対話や行動を強化する必要性」が認識された。麻生大臣からは、保護主義的な措置による内向き政策というのはどの国の利G20ブエノスアイレスの概要(2018年7月21日~22日開催、於:アルゼンチン・ブエノスアイレス)18 ファイナンス 2018 Sep.SPOT

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る