ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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現行制度において、課税事業者の方は、原則として、法令に規定された事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされています。軽減税率が実施される2019年10月1日以降は、現在、保存していただいている帳簿及び請求書等に、区分経理に対応するための記載事項が追加されます。これを「区分記載請求書等保存方式」と呼んでいます。「区分記載請求書等」とは、現行の「請求書等保存方式」における、請求書等の記載事項に追加して「軽減税率の対象品目である旨」と「税率ごとに合計した税込対価の額」が記載されたものをいいます。期 間帳簿への記載事項請求書等への記載事項2019年9月30日まで【現行制度】●課税仕入れの相手方の氏名又は名称●取引年月日●取引の内容●対価の額●請求書発行者の氏名又は名称●取引年月日●取引の内容●対価の額●請求書受領者の氏名又は名称※2019年10月1日から2023年9月30日まで【区分記載請求書等保存方式】(上記に加え)●軽減税率の対象品目である旨(上記に加え)●軽減税率の対象品目である旨●税率ごとに合計した税込対価の額具体的な区分記載請求書等の記載例は次の図をご覧ください。請求書(株)○○御中平成XX年11月2日割り箸1,100円中華めん  ※2,160円なると   ※540円合計3,800円(10%対象 1,100円)(8%対象 2,700円)※は軽減税率対象品目(株)△△●軽減税率対象品目に「※」や「☆」等の記号を記載●記号が軽減税率対象品目を示すことを明らかにしておくこれ以外に、例えば次のような方法があります。(1)同一請求書内で、商品を税率ごとに区分し、区分した商品が軽減税率の対象であることを表示する。(2)税率ごとに請求書を分けて発行する。税率(10%、8%)ごとに合計した税込対価の額を記載軽減税率の対象品目である旨税率ごとに合計した対価の額区分記載請求書について、1つの書類で記載事項を満たす必要はなく、例えば請求書と日々の取引内容について記載された納品書など、相互の関連性が明確で、かつ、これらの書類全体で、区分記載請求書等の記載事項を満たせば、これらの書類をまとめて保存することで仕入税額控除の請求書等の保存要件を満たすこととなります。なお、課税事業者が受領した区分記載請求書に、「軽減税率の対象品目である旨」と「税率ごとに合計した税込対価の額」の記載がない場合であっても、請求書等の交付を受けた事業者側が取引の事実に基づき自ら「追記」して、仕入税額控除を行うことができます。また、現行同様、必要事項が記載されていれば、請求書でなくとも領収書やレシートも「区分記載請求書等」として認められ、取引額が3万円未満の場合や、自動販売機で購入した場合など請求書等の交付を受けることが困難な場合には、これらの事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。次に帳簿の記載方法ですが、次の図の総勘定元帳にあるとおり、現行の記載事項に加え、売り手・買い手の双方で「軽減税率の対象品目である旨」の記載が必要となります。総勘定元帳(仕入れ)(株)○○XX年摘要借方貸方月日2(株)△△雑貨2(株)△△食料品※……………※は軽減税率対象品目記帳イメージ11111,1002,700総勘定元帳(売上げ)(株)△△XX年摘要借方貸方月日2(株)○○雑貨2(株)○○食料品※……………11111,1002,700※は軽減税率対象品目「軽減税率の対象品目である旨」の記載については、区分記載請求書等と同様に、軽減税率の適用対象を示す記号(「※」や「★」など)等を記載する方法がありますが、この他に、税率区分欄を設けて、税率を記載することや、税率コードを記載する方法もあります。なお、帳簿への取引内容の記載は、商品の一般的 ファイナンス 2018 Aug.5消費税軽減税率制度、インボイス制度が実施されます!特集

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