ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Instituteはじめにみなさんこんにちは、岡本行夫です。本日は2部構成です。第一部は「激動が始まっている世界」について、第二部は「日本の国際化ために必要なこと」についてです。本日はスライドの資料をたくさん用意してきましたが、すべてについてご説明することはできないことを予めお断りしておきます。本日の講義の後半でも申し上げますが、日本が国際公共財としての役割を担っていく必要性は益々高まってきており、そのための大きな柱となるのが経済協力です。わたしもこの分野で何かお手伝いできないかと、最近、JICA(独立行政法人国際協力機構)の特別アドバイザーという立場で、いろいろな関係者にお願いしてまわっています。1.激動が始まっている世界(1)急膨張する世界最初のポイントは「急膨張する世界」です。皆さんご承知の通り、この地球では驚くほどの人口の増加が進んできています。地球上で初めて10億人の人間が住むようになったのが1804年です。つまり古代文明の頃から数えて6000年ぐらいかかって地球上に10億人の人が住むようになったわけですが、なんと123年後の1927年にはもう人口は20億人になっています。さらに32年後の1959年に30億人、その後は15年後、13年後、12年後、12年後に10億人ずつ増加してきたのです。ものすごい勢いでの人口の膨張であり、現在76億人です。私は1945年生まれですが、1950年、私が5歳の時の世界の人口は25億人です。私の短い一生の間に、地球の人口はなんと3倍にもなったのです。物理のブラウン運動が一定の空間に分子が閉じ込められ熱や圧力が加わることで、分子の活動が活発になるように、経済の拡大が人口の急増により発生しているのです。我々が暮らしている市場経済世界を考えてみると、私がOECD代表部にいた1972年のOECD加盟国は23か国、冷戦が終わって旧ソ連邦が崩壊した1991年ころではOECD加盟国は34か国、12億人が市場経済だったわけです。その当時は、いわゆる「南北問題」といわれるように、富める北が貧しい南に施しを与える、という形の世界が広がっていました。しかし、冷戦が終わり、旧東欧諸国、旧ソ連邦、ベトナムといった国々が市場経済に加わり、さらにはインド、中国も市場経済の仲間入りをするようになり、今やほとんどの人々が、市場経済で生きるようになったのです。つまり世界全体の人口が増えているうえに、我々の直接の競争相手となる市場経済の規模が大きく膨らんだのです。そして増えた人口は都市へ、都市へと集中してきているのです。(2)反グローバリゼーション2つ目のポイントは「反グローバリゼーション」です。平成30年4月26日(木)開催職員 トップセミナー岡本 行夫 氏(岡本アソシエイツ代表)「激動が始まっている世界」と 「日本の国際化のために必要なこと」演題講師 ファイナンス 2018 Aug.59連 載 ■ セミナー

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