ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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消費税「軽減税率制度」は、消費税率10%への引上げに伴う低所得者への配慮の策として、飲食料品*1と一定の新聞の譲渡を対象に2019年10月より実施され、「軽減税率制度」の実施から4年後の2023年10月からは複数税率に対応した仕入税額控除の方式として「適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)」が導入されることになります。今回はこれらの制度について、導入の背景やその内容を分かりやすく説明します。なお、文中、意見等にわたる部分は筆者の個人的見解であることを予めお断りしておきます。1  消費税率の引上げと 軽減税率制度等の実施2012年8月、いわゆる税制抜本改革法*2が公布されました。この法律は、少子高齢化が急速に進み、社会経済状況が大きく変化する中で、世代間及び世代内の公平性が確保された社会保障制度を構築することが我が国の直面する重要な課題であることに鑑み、社会保障の充実・安定化と財政健全化の同時達成(社会保障と税の一体改革)を目指す観点から消費税法を改正し、消費税収の使途を「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費」(社会保障4経費)に充てることを明確化するとともに、消費税率を10%へと引き上げること等を内容としています。*1) 「飲食料品」とは食品表示法に規定する「食品」(酒税法に規定する酒類を除く)をいいます。*2) 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成24年法律第68号)消費税をはじめとする税制抜本改革で安定財源確保社会保障の充実・安定化財政健全化目標の達成同時達成待機児童解消、在宅医療の充実、認知症施策の推進、保険料軽減などに対応+高齢化の進展などによる給付費の増に対応し、現行の社会保障制度を安定化(安定財源確保)諸外国と比べても非常に厳しい財政状況を改善▼消費税率を10%(国・地方)へと引上げ(2019年10月)ところで、消費税は、「消費一般に対して広く負担を求めることにより、同等の負担能力を持つ者には、同等の税負担を求めるべき」という税負担の水平的公平性の確保に資するという性質を有しているため、消費水準に対応した税負担となります。したがって、消費税の負担額は高所得者ほど高くなりますが、収入に占める消費税の負担割合は低所得者ほど高いとされています(いわゆる逆進性)。こうした消費税の性質(逆進性)に鑑み、税制抜本改革法第7条においては、消費税率の引上げに伴い、低所得者への配慮の策を検討することとされており、これを踏まえ、2016年3月に公布された法律において、消費税及び地方消費税の税率10%への引上げに伴う低所得者対策として消費税の「軽減税率制度」が導入されたほか、複数税率制度の下で適正な課税を確保するための仕組みである「適格請求書等保存方式」(いわゆる「インボイス制度」)が導入されました。特集消費税軽減税率制度、 インボイス制度が実施されます! 主税局税制第二課課長補佐 加藤博之2 ファイナンス 2018 Aug.

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