ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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働し、「プラットフォーム」設立に向け連携して調整を行っているところです。(1)鹿島市及び商工会議所が一体となってブースを設け、高校2年生を対象に「企業説明会」を実施する。(2)鹿島市役所総務部理事(筆者)が毎年近隣の高校、中学校(3年)に講演を行う。(3)平成29年度から実施している小学生の市内企業訪問を継続して実施していく。設立後には鹿島市、鹿島商工会議所、近隣の高等学校3者合意のもと「記者発表」を行い市報にも掲載するなど、見える「かたち」を披露することで鹿島市民の方々に喜びや安堵感を少しでも感じて頂ければと思っています。「若者流出」については、佐賀県知事と県内20市町の首長が高校生の県内就職率向上に対する意見交換の中でも・高校卒業後、進学者の8割、就職者の4割が県外に流出・高校生が県内にとどまりたいと思う取組みが不可欠・郷土のよさを育む「ふるさと教育」の重要性を認識すべき・自治体と連携すべきなどの意見が続出しており、また、平成29年12月に開催された政府の「まち・ひと・しごと創生会議」の中で、「東京への一極集中に歯止めがかからない現状を受け、都会の若者がふるさとに戻るUターンや地方に移住するIターンなどを推進するため、学生と地方企業を結びつける自治体の取組みを支援する」との方向性に、鹿島市の取組みは一致しているのではないかと思っています。冒頭、観光を中心とした「交流人口」の増加についてご説明申し上げましたが、私の派遣先であるこの鹿島市の様々な取組みに対する素晴らしさは、マイナスをプラスに、ネガティブな事象をポジティブに発想を変え、しかも、行政や補助金に頼るばかりではなく、地域住民が主体となって組織を立ち上げているところです。つまりこの「まち」を引っ張っていく「地方創生」に一番必要な人材が各分野に複数育っているということです。私が派遣後、しばらくしてそのことに気づいたことから「交流人口」増加に向けた市民の取組みは側面から支援することとし、むしろ私(筆者)は、市内事業者や市民が「若者流出」に危機感を感じている「定住人口」増加に向けて尽力することにしたわけでございます。鹿島市の教育委員会は中学校以下については管轄していますが、高校は県の教育委員会が管轄しているため、市が高校に対して何か働きかけるような発想がそもそもございませんでした。これは無理のないことだと思い、「よそ者」である私が派遣後、風穴を開けてきた次第です。イ.派遣元との連携財務局では経済界の方々に「ヒアリング」を行うことが多々ありますが、これが非常に役立ちました。多くの地方都市は人口減少に悩まされていますが、それぞれの「まち」で歴史や文化、首長の考えなどが異なります。したがって「あのまち」で成功したことが「このまち」で成功するとは限りません。我々派遣者は、庁内で議論するよりも、住民や事業者の方々に数多く接し、この「まち」に何が不足しているのか、どうすればその不足を補えるのか「ヒアリング」を行い、その課題を与えられた仕事に活かしていくことがこの「まち」に貢献する一番の早道ではないかと思っています。私は、着任後の挨拶先で色んな方々からその声を聴き、或いは、高校生に対する講演後のアンケートを通じて子供たちの郷土に対する思いや将来に対するビジョンに耳を傾け、その思いに応えるため、前述した「プラットフォーム」の設立に向けて今年度から取り組んでいるところでございます。私(筆者)は「人口減少」という課題解決に向き合うことが第一の仕事であると考える一方、それ以外にもあらゆる側面から派遣先を応援することが非常に重要であると着任以前から考えており、では、そのためにはどうすべきかと考えた場合、思い至ったことは財務局職員としての立場や重責を背負い過ぎず、むしろ、派遣元である財務省・財務省福岡財務支局を大いに巻き込み、派遣中だけではなく、派遣終了後も「鹿島市」と「福岡財務支局」が「ウィンウィン」の形となることが最も望ましく、そのためには「連携」や「貢献」が重要であると考えました。40 ファイナンス 2018 Aug.

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