ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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・増資前後の投票権シェア:加盟国名見直し前(現行)見直し後1米国20.99%16.39%2日本6.01%6.81%3独4.77%4.78%4英仏4.48%4.49%5印露3.82%3.82%4増資交渉における我が国のリーダーシップこの資本増強パッケージの合意形成に際して、我が国は欧米諸国と連携して議論に積極的に貢献した。特に、米が政権交代のため、新政権下で検討に時間がかかるとして大幅なタイムラインの見直しを求めてきた際に、増資合意の実現可能性を危ぶむ世銀幹部や主要国の一部が、米国が単独拒否権を有するIFC増資を諦めたり、米国抜きのIBRDのSCIのみという小規模な増資という妥協案を検討する動きもあったが、我が国は「今回の増資は民間資金動員を一つの主要目的とするものである以上、IBRD・IFC双方の増資が必要であり、SCIだけでは資金基盤強化に不十分であるためGCIを目指すべき」との考えから2 by 2アプローチを提唱し、世銀増資の重要性を訴えるとともに、世銀事務局に先進国が増資に応じるための前提となる金利引き上げ、融資配分、卒業ポリシーといった様々な改革を真摯に検討するよう求めた。こうした努力の甲斐あって、当初は最低でも1年以上延期(下手をすれば無期限延期)されるとさえ思われたWBG増資は、IBRD・IFCのGCI・SCIの同時合意という最も理想的な形で成立した。資本増強パッケージの合意後、世銀幹部のみならず先進国・途上国から、日本の建設的な議論への貢献に賛辞の言葉が寄せられた。なお、本年春に実施したWBGの日本人採用活動では、IFCのルウェルー長官自ら訪日して面接するなどのリーダーシップを発揮し、過去最高の15名の日本人職員が採用された。IFCのフィンケルストン副総裁は報道に対し、来年も同程度の日本人採用を目指すと話している。日本人職員の活躍も含め、今後更なる日本のプレゼンスが高まることを期待したい。写真提供元:世界銀行/ブランドン・ペイン氏 ファイナンス 2018 Aug.25

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