ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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勘案したものです。なお、同日より前に航空券を購入した場合は、原則、経過措置として本税は課されません。4国会審議毎年度の税制改正大綱の内容のうち、国税に係る改正事項については、例年、所得税法等の一部を改正する法律案などとして一本の法案にまとめられ、国会に提出されているところですが、国際観光旅客税については新法の制定が必要であり、単独の法案として準備が進められました。平成30年2月2日、全27条及び附則からなる国際観光旅客税法案は、所得税法等の一部を改正する法律案と共に国会に提出され、13日には衆議院本会議において趣旨説明質疑が行われました。その後は所得税法等改正案と分けて審議されることとなり、財務金融委員会において2月23日、28日、3月2日の3日間で、合計7時間30分の質疑及び1時間55分の参考人質疑が行われた後に採決され、与党等の賛成多数で可決されました。その間、働き方改革法案の提出等を巡る国会情勢により、一部の野党委員の出席が得られなかったことや、与野党協議の結果を待ちながら深夜まで国会内で財務大臣以下待機したことがありました。また、3月2日の委員会では、財務省による決裁文書の書換えの疑いを報じる記事に関する質問がありました。その後、法案は3月9日の本会議において可決され、参議院に送付されました。参議院においては、4月4日に本会議において趣旨説明質疑が行われた後、財政金融委員会において4月5日、10日の2日間で、合計6時間の質疑と2時間の参考人質疑が行われた後に採決され、与党等の賛成多数で可決されました。その後、4月11日の本会議において可決、成立しました。両院における審議では、新税創設の意義、検討経緯、税額、徴収方法、税収の使途をはじめ、幅広い論点について数多くの質問がありました。4月18日、国際観光旅客税法は平成30年法律第16号として、関係政省令と共に公布されました。5おわりに今回、観光財源の確保という課題に対して、観光庁による主体的な検討の後、財務省も連携して、新税の創設という答を出した形となりました。ペイアズユーゴーの考え方は、厳しい財政状況を反映し、平成30年度税制改正で同じく創設が決定された森林環境税(仮称)にも見られます。このような手法が今後もとられるかどうか予断することはできませんが、一つの試金石としても、国際観光旅客税が円滑に導入され、その税収が観光の発展、ひいては日本経済の発展のために活用されることが望まれます。本税に係る検討過程において、その名称については、与党税制改正大綱の決定時まで確たるものはありませんでした。当初は「出国税」と報道されることが多く、観光関係者を中心に、観光財源の確保のための税であることを明確にすべきといった声があったことも背景に、自民党の観光立国調査会等においては「観光促進税」との名称が提案されました。他方、税の名称は課税の対象とするのが基本であり、本税については、納税義務者の約8割が観光を目的とした国際観光旅客であることから、税法上の正式名称は、主たる納税義務者に由来する「国際観光旅客税(こくさいかんこうりょかくぜい)」とされました。なお、「出国税」は、本税の検討経緯を踏まえれば、基本的な考え方としては(出国だけでなく)出入国という行為に着目して負担を求めるものであることや、所得税において国外転出をする場合の譲渡所得課税の特例が専門家の間で通称出国税と呼ばれることがあり紛らわしいといった問題がありました。最終的に、与党税制改正大綱では、「観光促進のための税として、国際観光旅客税(仮称)を創設」という表現となりました。「観光促進のための税」は、検討経緯を踏まえ、税の位置付けを明確にする観点から、平成24年度税制改正で創設された「地球温暖化対策のための税」(石油石炭税の課税の特例の通称)の例も参考にしつつ付されたものです。(「(仮称)」に関しては、その名称で法案が提出されることが確定していないという意味で付されるものです。)ちなみに、本税は外国人旅行者にも課されますが、外国語表記については、例えば、英語では「International Tourist Tax」、中国語では「国际观光旅客税」等として、周知が図られています。新税の名称について ファイナンス 2018 Aug.21

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