ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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され、成立しています。このように、国際観光旅客税は、個別の法律で使途が規定されているという意味において、特定財源に分類されます。(なお、課税根拠となる税法で使途が規定されているわけではないため、いわゆる目的税には該当しません。)3制度設計の考え方与党の税制調査会における議論等のため政府内で検討した項目は多岐にわたりますが、主な項目について、制度設計に当たっての基本的な考え方は以下の通りです。(1)課税の対象国際観光旅客税は、民間の航空機又は船舶で出国する観光旅客その他の旅客による本邦からの出国を課税の対象としています。これは、本税を財源として講じられる観光施策は、空港・港湾の出入国環境の円滑化・利便性向上等が含まれるとともに、国際航空・海運ネットワークの維持・拡大にも資することを勘案し、出入国という行為に着目し、日本人出国者や外国人ビジネス客を含め、広く薄く負担を求めることとしたものです。出入国に着目して課税するに当たり、円滑な入国手続や確実な執行の観点に加え、諸外国においては出国時に課税することが一般的であることを踏まえ、出国時に一度だけ課すこととしています。その際、原則として入管法(出入国管理及び難民認定法)に基づく出国の確認を受けることを要件としています。なお、入管法に基づく出国の確認を要さないとされている乗員等や、政府専用機等により出国する者の他、日本への入出国が目的ではないことや諸外国の制度との調和等を踏まえ、乗継旅客等については、課税しないこととしています。(2)税額国際観光旅客税の税額は、出国1回につき、1,000円としています。検討会では、運賃等に応じて設定すべきとの意見もありましたが、出入国手続きの円滑化等の観光施策による受益が運賃等に応じて異なるとは一概に言えないことや、本税を徴収する事業者から公平で円滑な徴収のためには税額は一律が望ましいとの声が多かったことも踏まえ、一律・定額としています。税額の水準は、近隣アジア諸国における類似の税の税額が1,000円から2,000円程度であるといった訪日旅行需要を巡る状況や、観光施策に関する財政需要を勘案したものです。平成28年度の出国者数(外国人2,580万人、日本人1,749万人)に基づけば、平年度の税収は約430億円となります。(3)徴収方法国際観光旅客税の徴収に当たっては、納税義務者、事業者、税務当局にとって効率的で円滑な出入国を阻害しない観点から、事業者が旅客から徴収し、国に納付する特別徴収制度を基本としています。我が国の出国旅客の約9割が利用する航空の分野では、航空会社や旅行会社が航空券販売時に税や空港使用料を徴収する仕組み(オンチケット方式)が国際的に整備されていることから、国際的な基幹システムや個社のシステムを更新して対応することとしています。船舶の分野では、統一的な既存の仕組みがないことから、それぞれの事業者が、オンチケット方式で徴収するか、運賃とは別に徴収するかも含め、港湾における実務の実態も踏まえて対応することとしています。国への納付に当たっては、航空、船舶を問わず、国内に事務所を有する事業者は、法人税等の納付先でもある事務所所在地の所轄税務署長に、それ以外の事業者は旅客が出国する港の所轄税関長に対し、出国の属する月の翌々月末までに納付することを原則としています。なお、プライベートジェット等、事業者の運送によらない出国については、特別徴収方式によらず、出国旅客が直接、又はハンドリング業者等の代理店を通じて、出国する港の所轄税関長に対し、出国の都度納付することを原則としています。以上のような徴収納付の仕組みが円滑に機能するように、現在、事業者や税務当局等において準備が進められているところです。(4)適用時期国際観光旅客税は、平成31年1月7日(月)以後の出国に課すこととしています。これは、2020年の東京オリンピック開催前にできるだけ財源を確保する観点や、徴収納付を行う航空会社等の準備期間を確保する必要性、また、年末年始の繁忙期の混乱を避ける必要性を20 ファイナンス 2018 Aug.

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