ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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合、受益と負担の関係を特定し、受益の程度に応じた負担とする必要。・税方式を採る場合、租税条約の「国籍無差別」条項との関係上、日本人、外国人に等しく負担を求めることが前提。・負担額は、公平性の観点や徴収事務を担う事業者の負担軽減の観点等から、航空・船舶にかかわらず、定額・一律とするのが適切ではないか。・徴収に関し、航空分野では、いわゆるオンチケット方式により旅客の航空券購入時に運賃と同時に徴収する仕組みが国際的に整備されているため、既存の仕組みを活用し、航空会社による徴収及び国への納付を基本とするのが合理的ではないか。他方、船舶分野では、統一的な仕組みがないため、実態を踏まえた精査が必要。このような議論を経て、検討会は11月に「中間とりまとめ」を公表し、税方式により出国旅客に負担を求めること、負担額は定額・一律とすること、その水準は、近隣アジア諸国との競争環境や訪日旅行需要への影響等を考慮し、一人一回の出国につき1,000円を超えない範囲で、必要となる財政需要の規模も勘案しつつ検討すること、可能な限り速やかな導入を検討すること等を提言しました。(3)与党税制改正大網検討会の「中間とりまとめ」の後、与党の国土交通部会や自民党の観光立国調査会においても観光財源の確保について議論され、「観光促進税(仮称)」を創設し出国旅客1人1回当たり1,000円の負担により必要な財源を確保すること、可能な限り早期の導入を図ること等が決議されるなどしました。11月下旬、税制調査会における検討が始まり、主税局からは、検討会における検討経緯や「中間とりまとめ」の内容、また、考えられる制度設計の案等について説明を行いました。出席議員からは本税の位置付けや税収の使途、また、納税義務者の範囲や施行時期等について質問や意見が出されるなど、精力的な検討が行われました。その結果、「国際観光旅客税(仮称)」を創設し、平成31年1月7日以後の出国に適用すること等が与党の「平成30年度税制改正大綱」(平成29年12月14日)に盛り込まれました。(4)使途に関する基本方針観光財源の使途については、検討会での検討等を踏まえ、関係閣僚会議において、「国際観光旅客税(仮称)の使途に関する基本方針等について」(平成29年12月22日)が定められました。基本方針では、(1)ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、(2)我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、(3)地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上、の3分野に税収を充当することとされました。また、充当する施策は、既存施策の単なる穴埋めをするのではなく、(1)受益と負担の関係から負担者の納得が得られること、(2)先進性が高く費用対効果が高い取り組みであること、(3)地方創生をはじめとする我が国が直面する重要な政策課題に合致すること、の考え方を基本とすることとされました。加えて、使途の適正性を確保する観点から、使途の3分野について観光庁所管の法律を改正し法文上明記すること等が盛り込まれました。この基本方針に基づき、国際観光振興法改正法案(外国人観光旅客の旅行の容易化等の促進による国際観光の振興に関する法律の一部を改正する法律案)が、国際観光旅客税法案と同様、第196回国会に提出(参考)国際観光旅客税の創設観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための財源を確保する観点から、国際観光旅客等の出国1回につき1,000円の負担を求める国際観光旅客税を創設する。概 要納税義務者航空機又は船舶により出国する一定の者(国際観光旅客等)非課税等・航空機又は船舶の乗員・強制退去者等・公用機又は公用船(政府専用機等)により出国する者・航空機による乗継旅客(入国後24時間以内に出国する者)・外国間を航行中に天候その他やむを得ない理由により本邦に緊急着陸等した者・本邦から出国したが天候その他やむを得ない理由により本邦に帰ってきた者・2歳未満の者(注)本邦に派遣された外交官等の一定の出国については、本税を課さない。税率出国1回につき1,000円徴収・納付(1)国際旅客運送事業を営む者による特別徴収▲国際旅客運送事業を営む者は、国際観光旅客等から徴収し、翌々月末までに国に納付(2)国際観光旅客等による納付(プライベートジェット等による出国の場合)▲(1)以外の場合、国際観光旅客等は、航空機等に搭乗等する時までに国に納付適用時期平成31年1月7日(月)以後の出国に適用(同日前に締結された運送契約による国際旅客運送事業に係る一定の出国を除く。) ファイナンス 2018 Aug.19

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