ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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介されたPIMAの有用性が再度評価されると共に、効率性の改善という観点から、途上国のみならず先進国にも適用し得るツールであるとの意見が出た。また、ポルトガルの財政危機において、PPPに関する資産と債務を政府の資産と債務として計上し直したことによって、政府債務の規模が非常に大きなものとなり、大きな財政リスクが認識されたことに触れ、包括的な統計システムの利用によって危機の予兆を把握し、PPPを含めた適切なリスク管理を行うことで、最終的には財政ルールの順守に繋がるのではないかという指摘があった。デジタル化については、デジタル化がどの程度ルールに基づく財政政策の一助になり得るか、ルールに基づく財政政策の分野にデジタル化が導入された場合、政策決定は政府の役割ではなくなるのかといった想像力を必要とする論点が取り上げられた。パネリストからは、どれだけAI等の技術が発展しても、財政政策決定の役割をAI等に取って代わられることはないのではないか、様々なデータが蓄積されることで、財政ルールの設定に関するアドバイスを与えてくれるようなAIが構築されたり、財政健全化に向けた国民意識の形成に資することになるのではないかという意見が出た。更にはこうした技術が様々な分野に浸透することで、例えば医療費の削減に繋がり、ひいては財政健全化に繋がるのではないかという意見も出た。特別講演■ ランチョンスピーチ: Fulin Chi 海南改革発展研究院長初日のランチでは、Fulin Chi海南改革発展研究院長(Wenfeng Wei海南改革発展研究院国際経済研究所長代読)から、「経済の構造転換及びアップグレードの趨勢と中国の税財政改革について」と題し、中国の最近の財政改革についての報告があった。■ イントロダクション: 鷲見 周久 IMFアジア太平洋地域事務所所長2日目の冒頭に行われたイントロダクションにおいて、鷲見所長は、アジア15か国24名のハイレベルな財政当局者が集結するこの機会を捉え、「アジアにおけるIMFのキャパシティ・デベロップメントの活動」と題し、IMFが実施するプログラムについて紹介した。IMFが今後実施するプログラムをまとめた冊子も配布し、積極的な参加を促した。■ 特別セッション: Nguyen Viet Loi ベトナム財政研究所所長セッション4の後に行われた特別セッションでは、Nguyen Viet Loiベトナム財政研究所所長(Le Thi Thuy Vanベトナム財政研究所国際協力課長代読)から、「財政の持続可能性に向けたベトナムの国家予算の再構造」について報告があった。クロージングセッションクロージングセッションでは、吉川洋財務総合政策研究所名誉所長より、2日間にわたって開催された当該フォーラムの総括が行われた。セッション1では、財政ルールについて、様々な問題点や課題が議論されたが、(1)経済が堅調な時は財政余力を蓄えること、(2)財政ルールは例外規定を予め設定し、厳しすぎず柔軟すぎないようなルールを設定すべきであるという2点はコンセンサスであると述べた。またセッション2及び3については、インフラ・ガバナンスの強化がインフラ投資の効率性及び生産性を著しく高めることに言及し、そのためにはプロジェクト選定の基準の明確化、財政への影響の評価、財政リスクのコントロール及び政府としての責任ある資金繰りという視点が欠かせないとした。セッション4のデジタル化については、その効果について言及し、ラウンドテーブルディスカッションにて充実した議論が行われたと述べた。最後に、何か良いアイデアなどを実際の政策として吉川洋財務総合政策研究所名誉所長16 ファイナンス 2018 Aug.

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