ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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することでマネジメント強化を行っていることが紹介された。セッション4:財政運営・管理におけるデジタルイノベーションの活用司 会:上田 淳二IMF財政局審議役発表者:Alan Gelbアメリカ国際開発センター シニアフェロ-兼研究ディレクターMark O’Donnell英国クラウンエージェンツPFMコンサルタント城山 英明東京大学公共政策大学院教授Seongho Jeong韓国財政情報サービス研究員討論者:Peter Morganアジア開発銀行研究所シニア・コンサルタントひとえにデジタル技術の財政運営・管理への活用と言っても、技術の導入分野に応じて得られる効果は様々である。予算編成や会計システムに導入されることで行政の効率化に資することもあれば、政府から民間への支払いがシステム化されることで、不正・脱税リスクを軽減することもできる。実際、韓国では1990年代後半から、従来の予算管理システムの統合及びデジタル化を内容とする改革が進められている。現在はDBASというシステムを活用しており、このような改革を通じて、省益の排除や予算査定にかかる時間の短縮等に成功している。また、補助金等の支払手段のデジタル化が多くの途上国で導入されており、タイムリーな支払いや支払記録の自動作成、取引費用の削減といった効果が得られている。なお、日本については、今後更なるデジタル化が見込まれうる分野として税務行政が挙げられ、申告書の自動チェックやAIを活用した調査対象者の選定といった税務行政自体の効率化の側面に加え、行政サービスといった他の分野との連携の可能性についても触れられた。また、今後より一層のデジタル化を推進するために必要となる視点も紹介され、こうしたシステムは実際に関係する顧客が中央省庁、地方政府、国際機関、国民など多岐にわたることから、それぞれのニーズをしっかり理解し、それを満たすこと、ユーザーの日々の経験をシステム構築に取り込むことなどが挙げられた。ラウンドテーブルディスカッション司 会:Gerd SchwartzIMF財政局次長参加者:Sothy Chanカンボジア経済財政省事務次官土井 俊範財務省財務総合政策研究所所長Lucio Pench欧州委員会 金融・財政局、財政政策及びポリシーミックス担当局長Suwit Rojanavanichタイ財務省財政政策局長ラウンドテーブルディスカッションでは、4名のパネリストが登壇し、2日間にわたって取り上げられたテーマについて、更に議論を深めるための意見交換が行われた。財政ルールについては、例えば投資のように、財政ルールの適用外として扱う分野を無くし、包括的に財政ルールを運用することで、財政規律の順守に繋がるだけではなく、投資の質自体の向上にも資するとの指摘があった。また、執行可能性の担保や、財政規律に対する国民の賛同や理解を得ることが財政ルールの運用の観点からは重要であるという意見もあった。一方、財政ルールや財政規律の順守のための具体的取組みとして、タイでは、財政責任法を制定し、政府自体を当該法律の影響下に置いた上で、財政責任法に従い、経済状況の予測、歳入・歳出等の予測など5項目から成る中長期の財政フレームワークを設定していること、またカンボジアでは、プログラム予算の導入という改革が行われたことで、各プログラムについてより詳細な議論が可能になりコストカットにつながったことが報告された。インフラ・ガバナンスについては、セッションで紹ラウンドテーブルディスカッションの模様 ファイナンス 2018 Aug.15

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