ファイナンス 2018年8月号 Vol.54 No.5
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(3)仕入税額控除の要件(買い手の注意点)インボイス制度の下では、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。保存すべき帳簿の記載事項については先述(4(1))した、区分記載請求書等保存方式の下での記載事項と同様です。保存すべき請求書等には、インボイスのほか、次の書類等も含まれます。ア 簡易インボイスイ インボイスや簡易インボイスの記載事項に係る電子データウ インボイスの記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類(相手方の確認を受けたものに限ります。)(書類に記載すべき事項に係る電子データを含みます。)エ 次の取引について、媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類(書類に記載すべき事項に係る電子データを含みます。)●卸売市場において出荷者から委託を受けて行われる生鮮食料品等の販売●農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等が出荷者(組合員等)から委託を受けて行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式によるものに限ります。)なお、請求書等の交付を受けることが困難な、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。a インボイスの交付義務が免除される、上記(2)aの3万円未満の公共交通機関による旅客の運送b 簡易インボイスの記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(aに該当するものを除きます)c 古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む事業者による適格請求書発行事業者でない者からの古物(※)、質物(※)又は建物(※)の購入d 適格請求書発行事業者でない者から再生資源(※)又は再生部品(※)の購入e インボイスの交付義務が免除される、上記(2)dの3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの購入f インボイスの交付義務が免除される、上記(2)eの郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります)g 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)※買い手の棚卸資産として購入する場合に限ります。(4) 免税事業者等からの課税仕入れに係る 経過措置2023年10月1日以降は、免税事業者などの適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れは仕入税額控除を行うことができなくなりますが、このような課税仕入れであっても、区分記載請求書等と同様の記載事項が記載された請求書等を保存していれば、2023年10月1日からの3年間は、仕入税額相当額の80%2026年10月1日からの3年間は、仕入税額相当額の50%を仕入税額として控除することができる経過措置が設けられています。(5)税額計算の方法2023年10月1日以降の売上税額及び仕入税額の計算はそれぞれ次のア又はイを選択できます。ア インボイスに記載のある消費税額等を積み上げて計算する「積上げ計算」イ 適用税率ごとの取引総額を割り戻して計算する「割戻し計算」(注) 売上税額について積上げ計算を選択できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。ただし、売上税額を「積上げ計算」により計算する場合には、仕入税額も「積上げ計算」により計算しなければならず、仕入税額を「割戻し計算」することは出来ません。適用できる計算方法の組み合わせをまとめると以下のようになります。売上税額割戻し積上げ仕入税額割戻し○×積上げ○○10 ファイナンス 2018 Aug.

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