ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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北海道最大の貿易港 苫小牧港函館税関 苫小牧税関支署長長谷川 正彦苫小牧1はじめに函館税関苫小牧税関支署は、苫小牧市に所在し、苫小牧市からえりも岬まで1市7郡(10町1村)を管轄区域としており、外国貿易港として開かれた港としては管轄内には苫小牧港のみとなっています。苫小牧港のある苫小牧市は、北海道の胆振(いぶり)地方中部に位置し、太平洋に面しているため太平洋側気候・海洋性気候で夏は涼しく、冬は北海道の中では比較的温和で降雪量も少ない地域となっています。人口は、17万人を超え、札幌市、旭川市、函館市に次ぐ北海道内4番目の人口規模になっています。市街地は東西に広がっており、千歳市との境には溶岩円頂丘(ドーム)を持った三重式火山の樽前山(活火山)があり、市東部にはバードサンクチュアリに指定され、国の鳥獣保護区やラムサール条約登録地にも指定されているウトナイ湖があるなど近郊には自然が多く残されています。樽前山を含む一帯は支笏洞爺国立公園の区域にもなっています。2苫小牧港の歴史(1)西港区の開発日本初の大規模内陸堀込式港湾である苫小牧港の築港運動は、大正末期から始まります。沿岸漁業中心であったが、沿岸漁業が不漁になるにつれ、「沖に出て漁をしたい」、「そのために漁港が欲しい」が出発点です。そこに勇払原野の開発がからみ、しだいに工業港の築設運動に変わっていきました。しかし、何もない砂浜に内陸堀込式港湾を造ることは、当時の技術的問題と莫大な経費の関係から、幾多の計画案が挫折していくこととなります。そして戦後の混乱がまだまだ続く昭和25年度の国家予算において、調査費程度の予算を獲得し、同26年8月18日に苫小牧港起工式が行われるまでに至りました。起工式は行ったものの、10年たった昭和35年度にようやく内陸掘り込みが開始されることになります。この後、工事は順調に進み、国鉄日高線の移設なども終え、港らしさを整えていきました。また、昭和38年3月には、未完成の港としては異例の重要港湾へ追加指定され、道内の重要港湾の仲間入りを果たし、その開港が約束されました。苫小牧港(西港造成中)かくして昭和38年4月25日、2隻の石炭積載船(第三北星丸、光輝丸)を第一船として迎え入港式が、8月18日には開港式が行われ、苫小牧港は名実とも90 ファイナンス 2018 Jul.連 載 ■ 各地の話題
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