ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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措置を取ることを可能にすること等が盛り込まれた。次に労働分野については、正規雇用労働者の高い労働コストが失業率悪化の一因とされていたことから、正規雇用労働者の解雇補償金の引下げ*1等の解雇規制の緩和が導入された。また、労使間交渉を見直し、産業別の労働協約より企業単位の賃金・労働時間交渉を優先させること等が打ち出され、労働条件変更の柔軟化が図られた。最後に金融セクターについては、2007年の住宅バブル崩壊以降、特に建設・不動産業向け与信の不良債権比率が急上昇していたことから、2012年に建設・不動産業向け与信の引当金積増し等が決定された。また、同年7月にユーログループ(ユーロ圏財務相会合)がスペインの金融機関に対する支援に合意したことを*1) 無期雇用労働者の解雇が不当と判定された場合の補償金支払い額を、勤続1年あたり給与45日分から33日分へ、最大42か月分から最大24か月分へ削減。*2) 2012年発足。ユーロ圏の財政及び金融の安定を支える金融支援機関。*3) 銀行から不良債権を購入し、購入価格以上の価格で転売するいわゆる「バッドバンク」。受け、ESM(欧州安定メカニズム)*2を通じた金融機関の再建及び公的資本注入、不良債権処理のための資産管理会社(SAREB)*3設立等が進められた。こうした各種施策の導入もあり、財政赤字の縮小【図表3】や不良債権比率の低下【図表4】、依然高水準ながらも失業率の改善傾向【図表5】が続いており、スペイン経済の成長を支えているとみられる。(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。【図表3】スペインの財政収支▲12▲11▲10▲9▲8▲7▲6▲5▲4▲3▲2▲1020102011201220132014201520162017(対GDP比、%)(出典)Eurostat【図表5】スペインの失業率141618202224262810/110/711/111/712/112/713/113/714/114/715/115/716/116/717/117/718/1(%)(出典)Eurostat(年/月)【図表4】スペインの不良債権比率01234567891020102011201220132014201520162017(出典)Datastream(%) ファイナンス 2018 Jul.85コラム 海外経済の潮流 112連 載 ■ 海外経済の潮流

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