ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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実質値上げの動きと物価への寄与・価格転嫁に向けた方策の一つとして、一部の企業では、価格ではなく容量を変える実質値上げを行う動きも見られている。こうした動きを確認するため、具体的に、食料品について分析を行った(食料品は、消費者が物価の変動を感じる品目の調査において、そもそも価格変化が大きい生鮮食品、ガソリン・灯油と並んで上位に位置付けられている)(図表7)。・CPIの「生鮮食品を除く食料」において実質値上げが行われた可能性が高い品目の寄与度を試算したところ、毎年一定程度の上昇寄与が確認できるが、その寄与は限定的であることも分かる(図表8)。ただし、CPIの調査対象ではない品目等においても実質値上げが行われている可能性については留意する必要がある。図表7 消費者が物価の変動を感じる品目0102030405060生鮮食品ガソリン・灯油食料品(生鮮食品除く)日用品公共料金や水・光熱費テーマパーク・施設等の入場料等(%)2016年11月2017年11月2018年4月図表8 CPIにおける食料物価の推移と実質値上げの影響▲10123420121314151617実質値上げ(前年比寄与度、%)(年)生鮮食品を除く食料(実質値上げ分を除く)※総務省「小売物価統計」ならびに「消費者物価指数」において銘柄改正がなされた品目のうち、容量が減少、かつ容量比リンクにより接続された品目を実質値上げとみなして算出。国内の需給動向の改善・企業の価格設定を取り巻く環境について、足下では、需給動向という観点からは改善の動きも出始めている。国内の需給動向を示す需給ギャップは、5四半期連続で需要超過を示すプラスとなっている(図表9)。・また、企業による国内製商品・サービスの需給判断DIをみると、依然として「供給超過」との回答が多いものの、6四半期連続で改善傾向を示している(図表10)。・足下のCPIにおける品目ごとの前年比の頻度分布を見ると、2012年と比較して、すそ野がやや上方へとシフトしていることも分かる。人件費や仕入価格の上昇が続く中で、今後の企業による価格設定の動向が注目される(図表11)。図表9 需給ギャップの推移▲2▲10121Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q20121314151617(%)図表10 国内製商品・サービス 需給判断DIの推移▲40▲30▲20▲1001Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q2012131415161718(%ポイント)図表11 品目別物価上昇率の分布2012年12月2018年3月010203040-10.5未満-8.5~-7.5-6.5~-5.5-4.5~-3.5-2.5~-1.5-0.5~0.51.5~2.53.5~4.55.5~6.57.5~8.510.5以上(%)(前年同月比、%)(出典)日本銀行「短観」「企業物価指数」「需給ギャップと潜在成長率」、厚生労働省「毎月勤労統計」、bloomberg、内閣府「消費動向調査」、消費者庁「物価モニター調査」、総務省「消費者物価指数」「小売物価統計調査」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2018 Jul.83コラム 経済トレンド 49連 載 ■ 経済トレンド

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