ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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コラム 経済トレンド49前大臣官房総合政策課 福島 宏祐/佐藤 麻紀子/小川 新九郎企業の価格設定行動について本稿では、近年の原材料費や人件費の上昇を受けた企業の価格設定行動について考察した。コスト増加と企業の価格転嫁・近年、企業業績は好調を維持しているが、企業の業況判断については、足下で高水準ではあるものの伸び悩みをみせている(図表1)。・その要因については、世界情勢への不安や為替動向等、様々考えられるが、人手不足による人件費の増加や原材料費の上昇等により、企業の仕入価格が上昇している点も影響している可能性がある(図表2)。・企業の仕入価格判断DIと販売価格判断DIの差はこれまで改善傾向にあったが、足下ではその傾向に変化が見られ、仕入価格の変動を販売価格へ転嫁することが難しくなっている状況が確認できる(図表3)。図表1 業況判断DI(%ポイント)▲30▲20▲1001020301Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q3Q1Q2012131415161718大企業・製造業大企業・非製造業中小企業・製造業中小企業・非製造業※2018年2Qは先行DI図表2 パートタイム労働者時間当たり 賃金と原油価格の推移(前年同月比、%)(前年同月比、%)▲60▲40▲20020406080100▲3▲2▲101234516114927125103816112012131415161718パートタイム労働者時間当たり賃金パートタイム労働者時間当たり賃金原油価格【USドル/バレル】(右軸)原油価格【USドル/バレル】(右軸)図表3 企業の交易条件▲60▲40▲2002005070911131517全産業製造業非製造業(販売価格判断DI-仕入価格判断DI、%ポイント)消費者態度への警戒・ここで企業物価を見てみると、2016年以降、素原材料や中間財では上昇傾向が見られる一方で、より消費者に近い最終財の伸びは限定的となっており、企業がより川下に近い製品において価格調整に苦しんでいる様子が窺える(図表4)。・その背景の一つとして、価格に敏感な消費者態度が存在する。消費者物価指数(CPI)と消費者態度指数との関係を見ると、両者には負の相関関係があり、企業はこうした消費者態度を警戒しながら価格設定を行っているものと考えられる(図表5、6)。図表4 需要段階別企業物価の推移(2015年=100)(2015年=100)7090110130150909510010511017171717171712012131415161718最終財中間財素原材料(右軸)図表5 CPIと消費者態度指数 (長期推移・2005年4月~)▲8▲6▲4▲20246▲20▲15▲10▲50510152005070911131517消費者態度指数消費者物価指数(右軸)(前年差)(前年比、%)(注)消費者物価指数は持ち家の帰属家賃を除く総合。図表6 CPIと消費者態度指数 (散布図・2005年4月~)y=-4.0344x-0.5223R²=0.4472▲20▲1001020▲4▲2024CPI(前年比、%)消費者態度指数(前年差)82 ファイナンス 2018 Jul.連 載 ■ 経済トレンド
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