ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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の成果が見える体験をすることが大事だ、ということです。ただ仕事によっては目に見えた成果が出てこないこともあります。この場合には、上司が「この仕事よくやったね」と声をかけることが大切です。これが成果として部下に認識される可能性があるのです。私たちが何かやろうとするのは、やって良かったと思えるからなのです。そうするとまたやってみよう、という意欲が湧いてくる。ところが落ち込んでいるときには、どちらかというと逃げに入っています。どうせ何をやってもダメだと。そしてますます何もやらなくなるのです。少し何かできれば、またやってみようという気持ちになっていきます。こういう仕事や生活のやり方ができるかどうかで心の健康はずいぶん変わってくるのです。(イ)やりがいを感じるコツいくつかありますが、そのうち3つについて説明します。1つ目は「気持ちが晴れる行動、やりがいある行動を増やしていく」ことです。良くない行動を「減らす」ことは難しいのです。やめろ、と言われると大体やりたくなるものです。そこで楽しいことや良いことを増やしていくのです。2つ目は、職務を付与するときもそうですが、「少しずつできることからやっていく」ことが大切です。このとき、自分にできることをきちんと把握しておくことも大切です。例えば、相手があって成り立つ「友達とお茶をする」と、自分だけで出来る「友達をお茶に誘う」では、難易度が全然違います。「友達とお茶をする」というのは友達の都合によって結果が違ってきます。つまり、自分の努力だけでは実現できないことがあるのです。この点を認識していないと、例えば日常の生活でも子育てとか介護とか自分でできることには限りがあるのに、全部自分でやらないといけないと考え、ストレスを感じてしまうことになるのです。どこまでだったら自分にできるのかを見極めることが大切なのです。職員の方がこういうことをご自身で考えることも重要ですし、皆さん方が部下の方とお話しなさる時に、Seligman & Maier(1967)の実験(坂本真士『自己注目と抑うつの心理学』)できた感をもてないと学習性無力感〈非随伴群〉逃避を学習できず、うずくまる逃避訓練をすぐ学習し、飛び移る第1段階 前処置第2段階 24時間後逃避・回避訓練〈随伴群〉〈無処置群〉76 ファイナンス 2018 Jul.連 載 ■ セミナー
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