ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Institute1.はじめにこんにちは。大野でございます。よろしくお願いいたします。私は精神科医でございまして、精神科の中でも薬というよりはカウンセリングを中心に治療をするという立場をとっております。本日は皆さま方が他の職員に接するにあたり、何か役に立つお話が出来ればよいな、と考えております。本日のお話の内容ですが、まず「認知行動療法」についてご紹介させていただき、その後に職員の心の健康の大切さ、さらには認知行動療法が心の健康にどのように役立つのかをご説明し、最後に職員の心の健康に役立つのではないかと思われます、3つのポイントをお話させていただきます。2.うつ病体験者の話心の不調、といってもなかなかイメージしづらいかと思いますので、その中でも特徴的なもの、職場でよく話題になる「うつ病」についてご説明いたします。口頭で説明してもわかりづらいかと思いますので、動画を用意しましたのでこれをご覧いただきます。この動画は、故小川宏さん(司会者、アナウンサー)が私とともにあるテレビ番組に出演された際の録画で、自らのうつ病体験を語ったものです。小川さんがだんだん体の不調を感じるようになり、次第に閉じ籠っていき、最後には自殺を試みようと踏切の前まで行ってしまう、という内容です。落ち込んでいる人間の心理を理解するのに分かりやすい内容です。動画にも出てきますが、小川さんの奥さんが、小川さんの体調を大変心配されて、何とか元気づけたいと思い、小川さんが好きなカラオケのセットを買ってきたりするのですが、小川さんは全然反応しない。奥さんとしては、せっかくいろいろやっているのに「何なのよ」と、不満を抱くようになる。こうしたことは職場でも発生します。元気がないので声をかけても反応がない、せっかく気を遣っているのに…、ということになってしまうのです。では動画をご覧ください。〈動画の概要〉○うつを発病したのは、朝の情報番組の司会者として活躍していた65歳の時だった。○当初は過労と風邪のせいだと考えた。○主な症状は、だるさ・倦怠感(足に鉛をつけられたような感じ)と夜眠れないこと。食欲不振。○風呂にも入りたくない、人にも会いたくないので、パーティの誘いもすべて断る。○内科で検査するも持病の糖尿病以外に異常は見当たらず、不安が強まる。○仕事も休み、食事以外は書斎に閉じ籠る。○妻は夫を書斎から出すべく、あらゆる手段を試みたが失敗。妻の不満が高まる。○症状がどんどん悪化する中、自分は役に立たない人間だ、と絶望して、ある朝一人で自宅を抜け出し、電車に飛び込んで自殺しようと思ったが、飛び込む直前に家族の顔やジャーナリスト山谷親平氏の言葉(「自殺は愚か者の結論なり。」)が頭をよぎり、かろうじて自殺を踏みとどまる。○探していた家族に精神科に連れていかれ、うつ病と診断され、即日入院。治療の過程で、母親の介護や平成30年4月18日(水)開催職員 トップセミナー大野 裕 氏((一社)認知行動療法研修開発センター 理事長ストレスマネジメントネットワーク(株)代表)演題講師職場におけるメンタルヘルス~心の不調の未然防止と 活力ある職場づくりを目指して~72 ファイナンス 2018 Jul.連 載 ■ セミナー

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