ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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各国の事情を反映して議会などによる承認手続きが進み、2016年2月の旧正月期間中に国際機関発足の日を迎えます。最後の一か国の批准を待つ (2015年秋~冬)以前(第12回)に述べましたように、極めて大まかに言うと、AMRO協定は13か国中8か国(大口の貢献国などを含む)が批准書を寄託者であるASEAN事務局に提出することで手続きが完了し、その60日後に国際機関として発足する決まりになっていました。2015年の8月の中国の全人代常務委員会の国際機関設立協定案承認により、国の数としては十分で、残る大口貢献国(D国としておきます)の手続きが完了すれば、その60日後に国際機関が設立されるところまで到達しました。D国の国内手続きは迷走を続けていました。半年前の2015年春までのD国の説明は、D国の場合、国際機関設立協定については議会の承認は不要である、というものでした。設立協定検討の段階では、D国は、A国などの議論に真っ向から立ち向かい、IMFやADBに負けないしっかりした内容の国際機関を作るために議会審議は厭わない、との発言を繰り返していました。そのこととの整合性がないのは不思議でした。(なお、この発言は会議の流れを決定的に主導したもので当方は深く感謝しています)。2015年春になると説明ぶりが変わります。やはり国際機関設立協定については議会の承認が必要なことになった、議会の状況にもよるが、早ければ6月、遅4くとも9月には4444444承認が得られる見込みというものです。D国憲法で「重要な国際組織」に関する条約は議会承認事項と書いてあったからということのようですが、春まではAMROは東アジア地域の国際機関で「重国際機関を作るはなしASEAN+3マクロ経済 リサーチ・オフィス(AMRO)創設見聞録その15、各国議会による国際機関設立協定の承認と国際機関発足(4)(2015年秋~2016年春)根本 洋一図 ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)の設立経緯(2008年~2016年)2008年2011年2012年2013年2014年2015年2016年国際機関化サーベイランス経済の調査・分析危機対応の枠組み2008年9月リーマン・ショック↓2009年2月ASEAN+3財務大臣特別会議2011年4月AMRO(カンパニー)設立2011年11月サーベイランス開始2016年2月国際統計整備支援開始2012年5月国際機関化検討の指示2014年10月協定案に署名2015年~各国議会による協定の承認CMIM事務局としての役割の明確化2010年3月CMIM(契約の一本化)発効2016年2月国際機関の創設2013年5月~資本フロー動向に焦点2016年2月CMIM事務局としての機能開始2013年5月~バーナンキ議長発言による市場の混乱2015年8月~人民元切り下げに伴う市場の混乱2011年8月~米国債格下げに伴う市場の混乱54 ファイナンス 2018 Jul.連 載 ■ 国際機関を作るはなし
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