ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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的な財政教育にも資するものとなる。財務局等の任務には、経済調査、国有財産の活用、金融等の地域と関わる様々な活動がある。これらの他の手段と財務状況把握を有機的に結合することで財務局等全体の活動の地域での価値を高めていくことが可能となる。財務状況把握はまちづくりのmajor playerである市区町村と対話する土台となるものである。(5)実効性の向上財務状況把握の公開性と包括性を高めることでその活動の実効性を高めることも重要である。現在のところ、診断表は財務局等から対象団体に交付されるにとどまり、自動的に公表はされるものではない。財務局等は団体に自主的にその公表を働きかけているが、今後一段と公開性の程度を高めていくことが望ましい*14。包括性という点では、都道府県への展開が課題である。財務状況把握では市区町村向け取組が先行し、都道府県向けには、17年度からようやく「財務状況把握の結果概要(参考情報)」の交付をはじめたところである。都道府県向けの取組のステージアップを図る上でも、その活動への団体からの評価を高める建設的な取組が重要となろう。今後とも、財務状況把握への一般の理解を高めるとともに、政策手段として、その持てる潜在力の開発と発揮に取り組んでいく考えである。(参考文献)西條辰義(2017)「フューチャー・デザイン」『経済研究』第68巻財務省理財局(2018)「平成29年度 地方公共団体の財務状況把握等の結果について」財政制度等審議会財政投融資分科会提出資料(18年6月22日)財務省理財局(2018改訂)「地方公共団体向け財政融資財務状況把握ハンドブック」鈴木文彦(2017)「行政キャッシュフロー計算書は地方公会計の論点にどう答えるか」(大和総研)原圭史郎(2018)「参加型フューチャー・デザイン討議実践に見る『仮想将来世代』の役割」『学術の動向』2018年6月号前島雅彦、磯道真(2015)「自活体キャッシュフローの実力」『日経グローカル』NO.270吉岡律司(2018)「矢巾町におけるフューチャーデザイン」『学術の動向』2018年6月号*14) 行政キャッシュフロー計算書の作成方法については、「地方公共団体向け財政融資財務状況把握ハンドブック」において既に公表されている。これを活用して独自に行政キャッシュフローを計算し、団体の診断をおこなっている民間での取組例として前島・磯道(2015)がある。 ファイナンス 2018 Jul.23
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