ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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の影響について留意する必要があるとした。物件費については、駅前開発に伴う委託料の増加により今後も同程度で推移する見込みとなっていることから、その水準について町の中長期の財政のあり方を検討する中で慎重な検討が必要としたところである。そして、町が総合計画(後期計画)の策定に着手する時期であったことから、「後期計画の施策の検討に当たっては、現在作成していない収支計画の作成を含め、町の財政に与える影響を確認する観点から長期的収支見通しを考慮した財政運営にも留意する必要がある」とした。財務省理財局・東北財務局から矢巾町に対し「診断表を活用して町の財務状況や国の経済や財政等の見通しを住民に説明した上で、今後の総合計画を議論すれば、より実効性のある総合計画となるのではないか」と提案し、町も同意し、理財局・東北財務局もワークショップに参加することとなった。(2)ワークショップの模様18年5月下旬、矢巾町主催で開催されたワークショップには、公募による住民23名、町職員4名、当局職員4名の計31名が参加した。まず初めに理財局・東北財務局から、診断表の内容に沿った矢巾町の財務状況や我が国の経済・財政等の長期的な見通しについて説明をおこない、住民が議論をおこなうための情報提供をおこなった。矢巾町からは町の財政や総合計画(後期計画)の策定に向けた考え方について説明があった。その後、住民5~6名、町職員1名、国(財務省・財務事務所)職員1名を1班として4つの班を作り、同じメンバーで2回に分けて後期計画に掲げる政策課題について議論した*13。1回目は通常の意見交換として議論をおこない、2回目は2048年の人間(仮想将来世代)になりきって議論をおこなった。将来世代になりきるため、2回目の議論の際、参加者には法被をはおってもらった。町職員、国職員には意見交換に住民と同じ目線で参加してもらった。各班では、(意見表5:矢巾町ワークショップにおける議論の概要(例示)1回目(通常の議論)2回目(仮想将来世代としての議論)○住みやすい町であることは確か。ただ、特化して良いものも悪いものもない。○医大の建設により自然や景観が破壊されないか危惧している。○芸術文化の振興、運動・健康の増進が大切。○外に出られない人たちや町のコミュニティに入れていない人たちへのサポートが重要。○公共施設やバスがなくなることへの不満。○町内の発展度合いの不均衡への不満。○子どもたちの育つ環境が大切。○農業を守っていかなければならない。○発展するのはよいが、昔からの自然や歴史的な建築物がなくなるのは困る。○「30年前、あれをしていれば良かったな/あれをしておいて良かったな」というキーワードが出て、次々と意見が出てきた。例えば、・2048年には孤独死がない。あのとき世代を超えた交流の機会をつくっておいてよかったな。・2048年にも田んぼや山の風景が残っている。あのとき高い建物の建設を規制しておいて良かったな。・2048年には若者がたくさん町にいる。若者にとって魅力的な職場をつくっておいてよかったな。○30年前にも少子高齢化の問題はわかっていたのに、なぜ具体的な政策をしなかったのか。そう考えると、以下が重要。・将来的に学費や医療費等を免除するために今から税金の額を上げてプールする。・働く場・働き手を増やすため、若い世代や外国人労働者を矢巾に呼び込む。○農業体験を通じて農業者を育て、農地や自然を守っていければよい。2018年6月1日盛岡タイムス(第6面)*13) 矢巾町の総合計画では、(1)ひとを豊かに育み見守るまち「将来を担うひとの創造」、(2)自然とひとが共生するまち「将来に誇れるまちの創成」、(3)持続的な力を蓄えるまち「将来の活力につながるしごとの創出」、(4)みんなでつくる協働のまち「将来にわたり躍動する力の創成」の4つがテーマに掲げられていることから、意見交換に際しては、班の意見によりどれか一つに絞って議論してもらうことにした。 ファイナンス 2018 Jul.21

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