ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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を改修して町庁舎を移設することを計画するなど、公共施設を集約するコンパクトシティ構想を描くなどの取組で知られている。町が支援する「バンブーフロンティア構想」(荒廃林の竹を建材やバイオマス発電に活用する事業)は、地域活性化や自然環境保全の観点から全国的に注目されている。南関町に対して、九州財務局は2017年10月にヒアリングを実施し、18年1月に南関町長に診断表を交付した。診断表では、診断基準に照らして現在の財務状況に問題は生じていないとしつつ、人口一人当たりの扶助費や介護保険事業特別会計等への繰出金が類似団体と比較すると高い水準にあることなど、今後の財政運営で留意すべき点を指摘している。九州財務局から南関町長に診断表を交付したところ、町長から「借入金の状況からみた財務状況把握や全国平均・類似団体との比較分析は分かりやすい」との評価を頂いた。これを受けて、当局から「近々に実施される町議会議員選挙後、新選出議員へ診断表を説明する機会を設け、町の財政に関し理解を深めていただいてはどうか」と提案したところ、南関町長から「第三者(財務局)の立場から町の財務状況を説明すれば、町職員から説明するより議員の納得感が得られるのではないか」と同意が得られ、町議会議員への説明会を開催することとなったものである。(2)説明会の模様18年4月下旬、南関町庁舎内の会議室において、町議会議員全員(12名)と南関町長ほか町職員が集まり、説明会が開催された。九州財務局から理財部次長、融資課長が診断表の説明をおこなった。九州財務局からは、現在の町の財務状況について問題はないものの、類似団体等との比較では財務指標の多くが劣位にあることから、今後の行財政運営において改善すべき余地がある旨を伝えた。また、高齢化の進行により扶助費や介護保険事業特別会計等への繰出金は今後も高水準となる見込みであることから、介護予防事業の充実等の取組に期待したい旨を伝えた。意見交換において、町議会議員から「類似団体等との比較分析から町の財務状況が安心できる状況にはないことが分かった」、「予算を議論する際などに診断結果を活用していきたい」、「財務状況の悪化の兆しを感じた際に財務局に分析を依頼したい」といった意見が続き、予定した時間をオーバーしての意見交換となった。「介護予防事業等の取組で効果が上がっている事例があれば教えてほしい」との要望があったことから、大分県での地域ケア会議の活用による自立支援型ケアマネジメントの事例を紹介しつつ、後日、九州財務局において良い事例を整理の上、情報提供することとなった。説明会を総括して南関町長から「町の財政状況を深く知ってほしい議員に良い機会が提供できた。今後も機会があれば、こうした取組を続けていきたい」との発言を頂いた。5岩手県矢巾町の総合計画策定に係る 住民ワークショップへの参加 [財務省理財局・東北財務局](1)経緯、診断表の概要岩手県矢巾町は、岩手県のほぼ中央に位置し、人口は約2.7万人、盛岡市南部に位置するベッドタウンである。岩手県平均と比べると、年少・生産年齢人口の割合は高く、高齢者人口の割合は低い。2019年秋にも岩手医科大学附属病院が盛岡市から移転することになっており、今後、町の姿に相当の変化が見込まれている。これまで矢巾町は、高知工科大学・大阪大学と協働し、未来の人間になりきって意見交換をおこなう、フューチャーデザインの手法を用いた住民参加型ワークショップなどにより課題解決を図り、成果を上げている*12。18説明会の様子*12) フューチャーデザイン全般については、西條(2017)を参照。特に矢巾町での取組については、原(2018)、吉岡(2018)を参照のこと。 ファイナンス 2018 Jul.19
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