ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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の債務償還能力と資金繰り状況を判断する。3つの診断基準は、上述の4指標から構成されている。具体的な診断基準は図3に示すとおりであり、各診断基準は2つの財務指標を組み合わせて構成されている。診断対象年度(直近の決算年度)の4指標の値から、診断基準の(1)又は(2)に当てはまれば、当該診断基準に関して、その団体で財務上の問題が生じていると判定することになる。ヒアリング実施団体に交付する診断表では、この判定結果を踏まえ、債務償還能力や資金繰りが留意すべき状況にあるか否かの評価をおこなうとともに、財務上の問題が生じている場合はヒアリング等によって要因を把握し、その内容を診断表に記載している。また、地方公共団体が作成した中長期的な収支計画などから把握できる将来の財務見通しについても分析をおこなっている。ヒアリングを通じて気づいた点や内在するリスクなど財務上の留意点があれば、あわせて診断表に記載している。(3)沖縄県糸満市の事例一例として、17年度のヒアリング実施団体である沖縄県糸満市の診断表について説明する。糸満市は沖縄本島の最南端にある市である。沖縄総合事務局が17年9月にヒアリングを実施し、18年1月に糸満市長に対して診断表を交付している。表3は、糸満市の診断表に記載した糸満市の過去10年間の財務指標の推移である。糸満市の診断対象年度(15年度決算)における診断基準への該当状況は次のとおりとなる。・債務高水準の状況であるか否か:実質債務月収倍率は、直近10年間では改善しており、15年度では10.5ヶ月と診断基準(18ヶ月)を下回っていることから、債務高水準の状況にはない。・収支低水準の状況であるか否か:行政経常収支率は、11年度以降、診断基準(10%)を下回っており、15年度では8.1%である。他方、債務償還可能年数は、15年度では10.7年と診断基準(15年)を下回っていることから、両指標を合わせて見れば収支低水準の状況にはない。・積立低水準の状況であるか否か:積立金等月収倍率は、直近10年間では診断基準(3ヶ月)を下回って表3:4つの財務指標の推移(糸満市診断表から抜粋)2006年度2007年度2008年度2009年度2010年度2011年度2012年度2013年度2014年度2015年度類似団体平均値(2015年度)債務償還可能年数29.4年20.6年17.6年10.7年10.8年12.7年19.9年12.3年18.5年10.7年6.8年実質債務月収倍率19.7月18.2月16.6月15.3月14.3月13.7月13.4月12.6月12.0月10.5月9.4月積立金等月収倍率1.2月2.0月2.2月2.4月2.3月2.2月1.8月1.8月1.4月1.6月6.3月行政経常収支率5.6%7.3%7.8%11.9%11.1%9.0%5.6%8.5%5.3%8.1%13.7%※債務高水準、積立低水準、収支低水準となっている場合は、灰色で表示。図3:財務状況把握の診断基準最終目的視点財務上の問題診断基準(市区町村)財務指標(債務系統)(積立系統)債務償還可能年数償還確実性債務償還能力資金繰り状況実質債務月収倍率行政経常収支率積立金等月収倍率債務高水準(1)実質債務月収倍率が24ヶ月以上(2)実質債務月収倍率が18ヶ月以上、かつ、債務償還可能年数が15年以上(収支系統)収支低水準(1)行政経常収支率が0%以下(2)行政経常収支率が10%未満、かつ、債務償還可能年数が15年以上積立低水準(1)積立金等月収倍率が1ヶ月未満(2)積立金等月収倍率が3ヶ月未満、かつ、行政経常収支率が10%未満16 ファイナンス 2018 Jul.

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