ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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財務局等では、診断表を広く一般にも活用していただくため、地方公共団体のホームページ等での公表を促している。なお、この財務状況把握の流れは、市区町村を対象としたものであり、都道府県を対象としたものではない。都道府県に対する財務状況把握についても、その枠組みの構築を図るべく意見交換を開始しており、2014年度から16年度までに47都道府県を一巡し、17年度から二巡目に入っているところである。(2) 4つの財務指標の算出から、3つの診断基準への当てはめへ財務状況把握は、行政キャッシュフロー計算書から、4つの財務指標、具体的には、「債務償還可能年数」、「実質債務月収倍率」、「積立金等月収倍率」、「行政経常収支率」を算出することからはじめられる。各指標の概要は図2に記載のとおりである。表1では、市区町村全体の行政キャッシュフロー計算書から、4つの財務指標を算出するプロセスを再現しており、確認頂きたい。先述のように、財務状況把握は償還確実性の確認を第一義としているため、その指標は、自主的な改善努力による財政の早期健全化を促すことを目的とする地方財政健全化法に基づく健全化判断比率とは目的が異なる。例えば、財務状況把握の行政経常収支率では、収支を返済等にあてられるキャッシュベースの利益金とみる発想から、「収支/収入」という計算式を用いている。臨財債については、財務状況把握では特段の調節をほどこしていない*9。表2は財務状況把握の財務指標と地方財政健全化法に基づく健全化判断比率を対照したものである。4つの財務指標を算出の上、財務状況把握においては、「債務高水準」、「積立低水準」、「収支低水準」の3つの診断基準への該当状況を確認することで、団体表2:財務状況把握の財務指標と地方財政健全化法に基づく健全化判断比率財務状況把握の財務指標健全化判断比率目的貸し手としての償還確実性の確認地方公共団体の財政の健全化視点・債務償還能力(長期的視点)・資金繰りリスク(短期的視点)・財政の健全化に関する比率の公表・財政の早期健全化・再生指標フロー概念・行政経常収支率・実質赤字比率・連結実質赤字比率・実質公債費比率ストック概念・積立金等月収倍率・実質債務月収倍率・将来負担比率フロー概念+ストック概念・債務償還可能年数―図2:4つの財務指標指標意義算式家計に例えると債務償還可能年数(単位:年)1年間で生み出される償還原資の何倍の債務を抱えているか実質債務/行政経常収支※実質債務=地方債現在高+有利子負債相当額-積立金等ローンを返済するのに何年かかるか収入債務償還原資支出収支収支実質債務月収倍率(単位:月)一月当たり収入の何ヶ月分の債務があるか実質債務/(行政経常収入/12)ローンが給与の何倍か収入月収12で割って一月当たりの収入を算出債務月収積立金等月収倍率(単位:月)一月当たり収入の何ヶ月分の積立金があるか積立金等/(行政経常収入/12)預貯金が給与の何倍か収入月収12で割って一月当たりの収入を算出積立金等月収行政経常収支率(単位:%)収入からどの程度の償還原資を生み出しているか行政経常収支/行政経常収入ローンの返済に回せるお金はどのくらいか収入収入償還原資支出収支収支*9) 例えば、健全化判断比率の一つである将来負担比率では、下の計算式のとおり、分子から「地方債現在高等に係る基準財政需要額算入見込額」を、分母から「元利償還金・準元利償還金に係る基準財政需要額算入額」を控除することにより、元利償還金相当額の全額が後年度地方交付税の基準財政需要額に算入される臨財債の調節をおこなっている。 将来負担比率=(将来負担額-(充当可能基金額+特定財源見込額+地方債現在高等に係る基準財政需要額算入見込額))/(標準財政規模-(元利償還金・準元利償還金に係る基準財政需要額算入額)) ファイナンス 2018 Jul.15
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