ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
15/100
3皆が裨益する経済成長近年、国際社会では、「包摂的な成長」の重要性が強く認識されるようになっている。技術革新やグローバル化の進展は大きな利益をもたらしうるが、国際的、国内的な格差が拡大し不満が広がると、保護主義が台頭するなどして経済成長が損なわれたり、政治や社会の制度への信頼が失われたりしかねない。今回のG7では、こうした観点から、GDP統計にとどまらない幅広い指標—例えば、労働者のスキル開発や訓練、貧困層への支援、教育を受ける機会の均等、労働市場におけるジェンダー・ギャップ—を踏まえて経済政策運営を行う必要が強調された。麻生大臣からは、包摂的成長は、保護主義への対抗という観点からも重要であり、各国はそれぞれの状況に応じた対応策を自国の国内政策として講じていくことが必要である旨の説明を行った。4現代経済における変化への適応技術革新に伴う機会と課題について議論し、国内政策の経験から学んだ教訓が共有された。特に、人々が現代経済の急激な変化に適応できるよう、教育制度を生涯学習モデルに移行させる必要性が強調された。麻生大臣からは、技術の発展に対応する上では、労働者の人的資本を高めていくことが重要であり、教育が鍵となること、日本においても、消費税率引上げによる増収分の活用により、幼児教育の無償化や、低所得層を対象にする高等教育無償化を実施するとともに、リカレント教育を抜本的に拡充し、人的資本への投資を充実させることなどの説明を行った。5暗号資産のリスクと潜在的利益の バランス最近注目を集めている暗号資産(仮想通貨)についての議論では、関連する技術が金融セクターをより効率的にする可能性がある一方、暗号資産は不正取引の実行に使われる可能性があり、投資家保護や市場の公正性の問題を提起しうるとの認識が示され、グローバルな金融システムの中で規制行動の有効性を確保するために、国際協調が必要であるとされた。麻生大臣からは、G7として、まず規制等のギャップや不整合の特定のための情報共有、意見交換を行うことが有益であると述べ、日本が、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策に関するFATFでの議論をリードしていく考えであることを説明した。G7(ウィスラー)ファミリーフォト共同記者会見 ファイナンス 2018 Jul.11
元のページ
../index.html#15