ファイナンス 2018年7月号 Vol.54 No.4
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金貨、カラーコイン、シリーズもの……時代に合わせて新たな記念貨幣の 製造にチャレンジする造幣局 取材・文 向山勇日本初の記念貨幣は昭和39年の 東京オリンピックで発行2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて37種類の記念貨幣が発行されることになりましたが、日本で最初に記念貨幣が発行されたのは、1964年に東京オリンピックが開催されたときでした。その際には、千円銀貨が1,500万枚、百円銀貨が8,000万枚発行されました。最初に発行が決まったのは百円銀貨で図案は公募されました。結果3万512点の応募があり、その中からオリンピック聖火台と五輪マークをデザインしたものが一席に入選し、貨幣の表に採用され、裏には太陽がデザインされました。その後、千円銀貨の発行が決まり、図案は造幣局が作成、表は日本の象徴である富士山と桜、裏には五輪マークがデザインされました(図表1左参照)。百円銀貨は1964年9月21日と11月24日、千円銀貨は10月2日と29日の2回ずつ、銀行での引き換えが行われました。当時の新聞を見ると引き換えを希望する人が長い列を作ったことがわかります。日本最初の記念貨幣は、国民から非常に好評をもって迎えられたことを示すエピソードといえるでしょう。その後、さまざまな記念貨幣が発行されることになりましたが、その中には数多くの新しい試みも行われました。その一つが天皇陛下御在位60年記念十万円金貨です(図表1中参照)。昭和天皇が1985年12月25日にご在位60年目を迎えられたことを記念して、1986年に発行されたもので、記念貨幣としては日本で初めての金貨となりました。金貨としても造幣局にとっては、1932年の二十円金貨以来で54年ぶりの製造となったのです。天皇陛下御在位60年記念貨幣では、他にも一万円の銀貨、五百円の白銅貨も発行されました。十万円金貨と一万円銀貨の引換に当たっては、1986年10月16日に全国の金融機関と郵便局の窓口で抽選券が配布されました。当日は抽選券を入手しようとする人で窓口に早朝から長蛇の列ができて用意された抽選券は午前中でほぼなくなったといいます。その後も2003年の第5回アジア冬季競技大会記念千円銀貨では、日本で初めてのカラー記念貨幣(図表1右参照)が発行されたり、地方自治法施行60周年を記念して2008年から発行がスタートした地方自治法施行60周年記念貨幣は47都道府県ごとに違うデザインで発行するという初めてのシリーズものの記念貨幣となりました。このように造幣局では常に時代に合わせた新しいチャレンジをしています。図表1 初めての記念貨幣の例初めての記念貨幣東京オリンピック記念千円銀貨幣発行年1964年図柄(表)日本の象徴である富士山と国花の桜図柄(裏)桜と五輪マークに算用数字1000初めての記念金貨天皇陛下御在位60年記念十万円金貨発行年1986、87年図柄(表)平和を意味する鳩と日本の自然、稲作文化を意味する水図柄(裏)菊の御紋章初めてのカラー記念貨幣第5回アジア冬季競技大会千円銀貨幣発行年2003年図柄(表)スキーとスケートの選手図柄(裏)大会シンボルマークとりんご6 ファイナンス 2018 Jul.

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