ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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2地域活性化・地方創生等の事例紹介~観光まちづくり会社 「WAKUWAKUやまのうち」の取組み~ア.WAKUWAKUやまのうちの設立山ノ内町は、長野県の北東部、上信越高原国立公園の中心に位置し、同国立公園の中核をなす志賀高原、湯量豊富で1300年余の歴史を誇る湯田中渋温泉郷など自然環境に恵まれた観光地として、内外に高い知名度を持つ人口約1万3千人の町です。スキー人口の減少等に伴い、観光客は年々減少していましたが、近年、スノーモンキーなどの観光資源が脚光を浴び、外国人観光客の増加につながっており、こうした地域の豊富な観光資源を活用し、地域の活性化を図るため、地元有志が中心となり「WAKUWAKUやまのうち(以下「WAKUWAKU」と呼称)」を2014年4月に設立。地域の魅力の情報発信、集客策の企画運営、観光客の滞在環境の整備など、観光地の賑わいを創出するきっかけづくりに取り組んでいます。山ノ内町外国人宿泊者数の推移0.060.0200020052010201420152016(単位:千人)1.74.427.228.740.455.8(出所:山ノ内町勢要覧)(西暦)米国豪州その他イ.ALL信州観光活性化ファンドの組成一方、(株)八十二銀行と(株)地域経済活性化支援機構が主導し、長野県内に本店を置く全金融機関が出資する「ALL信州観光活性化ファンド」を設立(2015年3月)。その投資目的に沿い、観光まちづくりモデルのパイロット地域として、志賀高原、湯田中温泉郷や訪日外国人に人気の高いスノーモンキー(地獄谷野猿公苑)等の観光資源を有する山ノ内町を選定し、第1号案件としてWAKUWAKUに出資(同年8月)。資金供給や人的支援を通じて活動を支援しています。ウ.WAKUWAKUの取組み内容等空き店舗等古い建物を元の外観を活かしながらリノベーションし、2016年4月にHAKKO(旧青果店からビアバー&レストランへ)、同年5月にCHAMISE(旧洋品店からカフェ&スペースへ)、同年10月にAIBIYA(旧老舗旅館からホステルへ)の直営店を先ずはオープン。インバウンド需要の取込みを狙った滞在型環境の整備を行っています。HAKKO:筆者撮影AIBIYA:筆者撮影WAKUWAKUの大きな特徴の一つとして、事業会社であるWAKUWAKUとは別に、地域における未活用物件の取得・改修、賃貸等を行う不動産管理会社((株)WAKUWAKU地域不動産マネジメント)が設立されており、WAKUWAKUの直営店の不動産は、サブリースの形式を取っています。同様に新規事業者の参入もサブリースとすることで、地域の一元的な街並み整備が可能となっています。この方式により2016年9月には、新規事業者によるZEN Hostel(ホステル)が、2017年2月には加命の湯(宿泊施設)が開業しています。こうしたWAKUWAKUの取組みに対して地元からは、「新たに開店した人の店は賑わいのきっかけになっており、こうした流れが山ノ内町の活性化につながることを期待している」との声が聞かれています。 ファイナンス 2018 Jun.89連 載 ■ 各地の話題

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