ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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麺めん屋や味み方かた【新橋】満を持して爆誕!『ラーメン二郎新橋店』なき後の新橋ガッツリ系ラーメンの救世主星の数ほどの飲食店が存在し、日が暮れると会社帰りのサラリーマンで不夜城のような賑わいを見せるJR新橋駅烏森口エリア。そんな飲食店街の外れに、本年4月、ラーメン専門店が新たに産声を上げた。その店こそが、今回ご紹介する『麺屋味方』だ。ロケーションを少し詳しく説明すると、同店は、JR新橋駅(烏森口)から5分程度歩いたところに佇む、路地裏の小さな店舗。シンプルだが温かみも感じる店の内外装は、創業60年を超える歴史を誇るデザイン会社に施工をお願いしたもの。まるで、のどかな田舎街の洋食屋のような小綺麗な空間に身を委ねていると、思わず、この店がどんなラーメンを提供しているのかさえ、忘れてしまいそうになるほどだ。が、同店が提供しているラーメンの系統は、端的に申し上げれば、ザ・キング・オブ・ガッツリ系とでも言うべき「二郎インスパイア系」! しかも、店主の経歴が、二郎ファン感涙もののサラブレッドぶり。去る4月21日をもって、人手不足のために惜しまれながらも閉店した『ラーメン二郎新橋店』の元店主だというのだから、二郎系店舗の中でもバリバリの本格派だ。オープンから間もない現段階において、既に「つけめん」や「ラーメン汁なし」など、『新橋二郎』にはなかったメニューも精力的に商品化しているが、初訪問時にチョイスすべきは、やはり、基本メニューである「ラーメン」。非乳化に近いスープの色合いは、限りなく漆黒に近い濃厚な褐色。スープを啜り上げた刹那、真っ先に口の中へと飛び込んでくるのは醤油ダレの芳醇な甘みだ。どことなく照り焼きのタレのようなニュアンスをも漂わせるその味わいは、飲めば飲むほど体感的な香ばしさが増幅。レンゲを持つ手が止まらなくなる魔性のうま味が、食べ手を虜にする。このスープに合わせる極太麺のクオリティも、身悶えしてしまうほど高い。製麺所に発注せず自家製にこだわった麺は、断面を真四角に切り揃えることで、重量感のある啜り心地が存分に堪能できる仕様。噛み締めると強靱なバネのように顎を押し返す弾力に、期せずして驚きの声を漏らしてしまった。「栄えある完食に向けて、麺との格闘を繰り広げる」。そんな二郎系の魅力を知り尽くした作り手の存在が、麺を通じて垣間見えたような気がした。二郎系ラーメンのもう一つの花形役者である「豚」も、超が付くほど肉厚でありながら、淡雪のように舌上で溶ける貫禄の完成度。スープを飲み干し空っぽになった丼を見つめながら、改めて確信した。『新橋二郎』なき後の新橋において、同エリアのガッツリ系ラーメンシーンを牽引していくのは、この『麺屋味方』に間違いないと。プロフィールラーメン探究家 かずあっきぃ(田中 一明)1972年11月生まれ。学生時代に出逢った1杯のラーメンに感銘を受け、1995年より本格的な食べ歩きに着手。「ラーメンの魅力の探究」をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンをコンスタントに実食。総食杯数は12,000杯を超える。日本全国のラーメン事情に通暁し、各種媒体にラーメン情報を精力的に発信。 ファイナンス 2018 Jun.81かずあっきぃのラーメン探訪記連 載 ■ かずあっきぃのラーメン探訪記

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