ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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広報活動についてお話したいと思います。私はカンボジアに赴任後、税の重要性・役割などの説明のほか、既述したSAF普及のため、カンボジア全土を行脚しました。プノンペン市内税務署9署、地方24署の計33署を全てを回り、講演・セミナーを実施しました。飛行機や鉄道網がほぼなく、高速道路もないカンボジアでは、移動は原則として車ですが、プノンペンからモンドルキリ州経由でラタナキリ州まではざっと540キロメートル、車で10~12時間、一般道路を車に揺られていく以外交通手段はありません。途中ぬかるみもあり、4WDは必須です。全ての地方の州を訪れ、まず感じたことは、プノンペンやその他主要都市と地方の州では全く別の“国”ということです。ある地方は、プノンペンとは異なり高層ビルはもちろん、タクシーもなく、道路も舗装されていません。また、納税者の質問内容にも大きな違いがあります。プノンペンでは、事業所得税(Tax on Income)の計算方法などのテクニカルな質問が多いのに対し、地方では、税金とはいったい何ですか? なぜ税金を払う必要があるのですか? といった類です。地方では、字が読めない、書けない納税者にお会いした時は驚きました。納税意欲はあるのに申告書が書けないし、読めないのです。当然、帳簿をつけることはできません。しかし、税務職員いわく、「数字なので慣れればなんとかなるでしょう」。まーのんびりとした国だなーとしみじみと感じました。因みに識字率は、日本はほぼ100%ですが、カンボジアは81%(プノンペン94%、地方77%)となっています。ここで、こうしたセミナーを通じて体験したカンボジアの特徴を日本の日常との比較の観点でお伝えすると、以下のようになります。・セミナー開始前に、国歌が流れ、その際、税務職員、納税者が全員起立のうえ、国歌を清聴します(斉唱はしませんが)。その時に起立しない人、喋る人は誰もいません。・セミナー中であっても、開会式中であっても、壇上に上がっている州副知事や税務署長も含め、常にスマートフォンを片手に何の悪げもなく平気で電話をし、メールを打ち、写真を撮ります。日本の税務職員などは、研修中に携帯電話をさわったり、メールしたり、写真を撮ることなどは決して許されません。・日本と異なり(?)セミナー中に眠る税務職員、納税者はほぼいません。・セミナー終了後、Photo Session、すなわち納税者を含む全員の集合写真のほか、納税者も喜んで一緒に写真をスマートフォンで取り合い、写真撮影会が始まることが多くあります。・どんな田舎に行っても、必ず赤い大きな看板で「HONDA」があり、世界の隅々までホンダが浸透していることを実感します。ここで本題に戻りますと、租税教育・広報活動については、最終的な成果物としては、全国民向け租税啓発用DVDの作成、納税者向け税務知識アップのための写真2 カンボジア経済財政省租税総局本庁舎ビル写真3 「税務行政制度集中セミナー」のひとコマ ファイナンス 2018 Jun.79海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連 載 ■ 海外ウォッチャー

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