ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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1 はじめにクニョムチュモッホ、Mutoh Shizuki、ムンメーンMoto Suzukiサムラッチッヒステイ((訳)こんにちは、ムトウ・シズキと申します。モト(バイク)・スズキではありません)。ここカンボジアで講演する機会が多いなか、カンボジア人の心をまず笑いで掴むための私のクメール語第一声です(MutohとMoto、そしてShizukiとSuzukiの発音が似ているので、当地で有名なスズキ製のバイクにかけています)。現在2018年5月1日、気温36度。雨季のため毎夕、スコールに襲われるなか、カンボジアの首都プノンペンで本稿の締切りに追われ、必死で原稿を書いています。現在、私は、カンボジア経済財政省租税総局チーフアドバイザーとして、日本からの直線距離4,330キロメートル離れた異国カンボジアの首都プノンペンでJICA(国際協力機構)/GDT(経済財政省租税総局)プロジェクトの責務を担っています。2015年8月にカンボジアに赴任し、約3年。これから4年目に突入しようとしていますが、かつては試行錯誤の連続、ストレスの塊であったものの、考え方を変えればパラダイスの国カンボジア。すなわち、快適な海外生活を過ごすキーワードは「郷に入らば、郷に従え」です。こうすれば、全てを納得させ、支えてくれます。英語で言えば、ローマならぬカンボジア版“When in Cambodia, do as the Cambodians do”です。すなわち、場所が変われば、文化も社会も変わる、そこで日本というフィルターを通してモノを見れば、確かに他国には不可解で矛盾したことが鼻につくものが散見されます。しかし、フィルターを通さず、生まれたままの裸の頭、目でナマの国をそのまま見れば、心落ち着き(正確には、「心乱れず」ですが)、穏やかな日々を過ごすことができます。これまでの役人生活を振り返ってみますと、合計7年間2カ国3都市で海外赴任生活をしてきました。出張ベースでは、ドイツ、オーストリア、フランス、ベトナム、中国、ウズベキスタンを含め、計8カ国行かせて頂きました。海外赴任生活の1回目は、1996年から2年間の米国コーネル大学行政大学院生活、2回目は、2004年から2年間の国税庁ニューヨーク駐在員(長期出張者)生活、そして3回目は、2015年から現在に至るカンボジア経済財政省租税総局チーフアドバイザー生活です。世界の金融・文化・ファッション最先端のニューヨークでの勤務、生活から、その真反対である低所得国カンボジアの社会、文化、生活まで、まさにアドベンチャーワールドを経験してきました。しかしながら、先進国は快適、途上国は不便というわけではありません。これらどれをとっても、「えー?何でー?」「おかしくない?」「ふざけんるじゃない!」などから始まり、仮想の敵を作り、一人相撲を取ってストレスを溜め、疲れ果てていた自分がかつてはいましたが、海外生活も長くなってくると、ストレスはせいぜい最初の1週間。考え方次第で、あとは地元に溶け込み、有意義な生活を送るだけです。これまで勤務した海外の三都市、全てにそれぞれ固有の「郷」があり、日本の常識が別の国では非常識、そして、日本の非常識は別の国では常識といったこともたくさんあります。郷に入っても郷に従うな、という場合もあります。本稿では、こういうスタンスでの勤務・FOREIGN WATCHER海外ウォッチャープノンペン、ニューヨーク、イサカ 三都物語(上)~チャレンジ精神を持って、郷に入らば、郷に従え~カンボジア経済財政省租税総局チーフアドバイザー 武藤 静城74 ファイナンス 2018 Jun.連 載 ■ 海外ウォッチャー

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