ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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コラム 海外経済の潮流111大臣官房総合政策課 海外経済調査係 中島 賢作ASEAN5の経済状況アジア開発銀行(ADB)は、2018年4月に公表したアジア経済見通し2018年において、「アジアの開発途上国では、その多くで、高い輸出の需要と急速な内需拡大が続き、成長が加速した。」と指摘した。その中で、東南アジアについて、「東南アジア*1では、引き続き世界的な貿易拡大と商品価格の回復を追い風に、2018年と2019年は、2017年の成長率5.2%を保つと見られる。中でも、インドネシア、フィリピン、タイでは、堅調な投資と国内消費が成長を加速させ、ベトナムでは、産業基盤の拡大が成長の後押しとなる。」と述べている。【図1】世界経済の回復が続く中、その好影響は新興国にも波及し、ASEAN諸国においても高成長が見込まれる。本稿では、ASEAN5(インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシア)の経済の概況について取りまとめた。2017年の5か国のGDP成長率は、インドネシアが5.1%、フィリピンが6.7%、マレーシアが5.9%、タイが3.9%、ベトナムが6.8%となった。ADBによれば、2018年、2019年も経済の拡大が続き、2018年、2019年の伸びをインドネシアが5.3%、5.3%、フィリピンが6.8%、6.9%、マレーシアが5.3%、5.0%、タイが4.0%、4.1%、ベトナムが7.1%、6.8%と予測している。【図2】また、名目GDPに占める需要項目別のシェアを見てみると、個人消費を中心とした内需が経済成長をけん引していることがわかる。一方で、外需についてはタイ、マレーシア、ベトナムはプラス寄与となっている一方で、フィリピンではマイナス寄与となっている。【図3】次に輸出の伸びを見てみると、世界的に貿易が落ち込んでいた2015年にベトナムを除く4か国が前年からマイナスに転じたものの、2017年にはインドネシアが16.9%、フィリピンが12.8%、マレーシアが13.7%、タイが9.7%、ベトナムが21.1%と大きな伸びを見せている。ADBによれば、2018年、2019年も拡大は続き、2018年、2019年の伸びをインドネシアが5.8%、5.2%、フィリピンが6.8%、6.3%、マレーシアが5.0%、5.6%、タイが9.0%、10.0%、ベトナムが15.0%、12.0%と予測している。【図4】輸入の伸びについても、2015年の落ち込みから回復が続いており、2017年にはインドネシアが16.1%、フィリピンが14.2%、マレーシアが14.0%、タイが14.4%、ベトナムが22.3%となった。ADBによる2018年、2019年の予測は、インドネシアが8.9%、6.9%、フィリピンが7.0%、7.3%、マレーシアが5.8%、6.2%、タイが15.0%、16.0%、ベトナムが17.0%、15.0%となっている。【図5】CPIの推移についてみてみると、2017年はインドネシアが3.8%、フィリピンが3.2%、マレーシアが3.8%、タイが0.7%、ベトナムが3.5%となった。ADBは、2018年、2019年について、インドネシアが3.8%、4.0%、フィリピンが4.0%、3.9%、マレーシアが2.6%、1.8%、タイが1.2%、1.3%、ベトナムが3.7%、4.0%と予測している。【図6】IMFが予測する2018年、2019年の世界の実質GDP成長率が3.9%であるところ、ASEAN5の各国の伸び率はそれを上回っており、高成長が見込まれる。また、日本との関係についても、貿易・投資などの経済協力に加え、安全保障や文化交流においても密接なつながりがあるため、引き続き動向を注視してまいりたい。(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。*1) ADBは、東南アジア地域の構成国を、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムのASEAN10か国としている。64 ファイナンス 2018 Jun.連 載 ■ 海外経済の潮流
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