ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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産業別の労働生産性・我が国の労働生産性を産業別にみると、サービス業の労働生産性が相対的に低く、低下傾向にある(図表6・7)。また、労働生産性の低下を人手を増やすことで補い、さらに労働生産性が低下するという悪循環が起きている可能性も推察される(図表7)。・こうしたサービス業への労働移動が進む一方、サービス業の資本装備率は相対的に低下している(図表8)。有効な省力化・合理化投資により資本装備率を高めることができれば、労働生産性の引き上げにつながっていくと期待される。図表6 産業別労働生産性(2016年)050100150200250300350(全産業=100)製造業サービス業介護等業務支援等宿泊・飲食運輸・郵便卸売・小売建設情報・通信機器電気機械電子部品・デバイスパルプ・紙・紙加工品製造業全体(※)労働生産性は、時間あたり労働生産性。図表7 産業別就業者数及び労働生産性の伸び(2012~2016年の変化率)▲20▲1001020304050就業者数労働生産性(%)製造業サービス業介護等業務支援等宿泊・飲食運輸・郵便卸売・小売建設情報・通信機器電気機械電子部品・デバイスパルプ・紙・紙加工品製造業全体(※)労働生産性は、時間あたり労働生産性。図表8 資本装備率246810全産業製造業非製造業サービス業(百万円)(年度)20152010200520001995(※1)資本装備率=有形固定資産(建設仮勘定、土地を除く)(期首・期末平均)÷従業員数(※2)非製造業は、電気業、ガス・熱供給・水道業を除く。労働生産性の向上に向けて・さらに長期の労働生産性上昇率のトレンドについて、資本装備率に加えて、技術革新(TFP)と労働の質に要因分解すると、資本装備率・技術革新(TFP)の寄与縮小が労働生産性の伸び幅縮小につながっているほか、労働の質の寄与が相対的に小幅にとどまっていることが分かる(図表9)。労働生産性の向上には、設備投資、技術革新とともに、人材育成の強化などを通じた労働の質の向上も求められよう。・足もとの日本経済は、生産性の伸び悩みを非正規などの就業者数増加によって補っている状態にある(図表10)。しかし人口減少等により、今後こうした労働投入は限界を迎える可能性が高い。・労働生産性の向上は、賃金上昇の実現に加えて、日本経済の持続的成長にとっても重要な鍵となる。▲1.00.01.02.03.04.05.06.07.08.0(%)〈全産業〉2005-122000-051995-001990-951985-901980-851975-801970-75技術革新(TFP)資本装備率労働の質労働生産性▲1.00.01.02.03.04.05.06.07.08.0(%)〈製造業〉2005-122000-051995-001990-951985-901980-851975-801970-75技術革新(TFP)資本装備率労働の質労働生産性▲1.00.01.02.03.04.05.06.07.08.0(%)〈非製造業〉2005-122000-051995-001990-951985-901980-851975-801970-75技術革新(TFP)資本装備率労働の質労働生産性図表10 実質経済成長率の内訳▲0.50.00.51.01.52.0就業者数増加率労働生産性上昇率実質経済成長率(%)(年度)2010-162005-102000-051995-00(※)労働生産性は、就業者1人当たり労働生産性。(出典)厚労省「毎月勤労統計調査」、「一般職業紹介状況」、日銀「全国短期経済観測調査」、内閣府「国民経済計算」、総務省「労働力調査」、「消費者物価指数」、OECD Stat.、財務省「法人企業統計調査」、独立行政法人経済産業研究所「JIPデータベース2015」、日本生産性本部「生産性データベース」図表9 労働生産性上昇率の寄与分解 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。(※)生産関数Y=AKα(hL)(1−α)(YはGDP、AはTFP、Kは資本、Lはマンアワー労働力、hは労働の質、αは資本分配率)において、両辺をLで割ってYL≡y, KL≡k(資本装備率)とおくと、労働生産性(1人あたりGDP)の式y=Akαh1-αに変形できる。この式の両辺に対数をとって時間で微分すると、上記のグラフが描かれる。データは「JIPデータベース2015」による。 ファイナンス 2018 Jun.63コラム 経済トレンド 48連 載 ■ 経済トレンド

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