ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
64/96

第七回 広域(3)糸魚川と松本を中心にニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?「広域で日本を盛り上げる(3)」では、日本を東西に分けるフォッサマグナにちなみ、新潟県とお隣長野県の糸いと魚い川がわと松本を中心にみていきたいと思います。敵に塩を送った道かつては、海辺の塩田に塩の製造を頼っていたことから、信州(長野県)など内陸部に暮らす人々にとって、海岸地域から塩を調達することが生きる上で必須のことでした。日本各地で塩の道があったのです(諸説あるそうですが、「塩尻」という地名は、塩の道の終点という意味とも言われています)。そのうち、越後と信州を結ぶ千ち国くに街かい道どうは中世以前からその名を残す有名な「塩の道」で、糸魚川から松本まで塩を運搬する重要なルートでした。「敵に塩を送る」という言葉が生まれたのはこの街道です(時々「傷口に塩を塗る」と意味を混同されますね)。戦国時代に太平洋側の今川、北条両氏に塩を止められ困窮していた武田信玄に対し、長年敵対関係にあった上杉謙信が牛馬の隊列を整えて塩を送り窮状を救ったという美談です。その塩が運ばれたのがこの千国街道です。こうした歴史的な「塩の道」の存在から、例年ゴールデンウィークに各地でまつりが行われています。塩の道起点まつり(糸魚川市)から始まり、翌日から塩の道まつりが長野県小お谷たり村むら、白馬村、大町市と順次南下して開催されます。歴史、文化を感じながら、自然豊かな街道を歩くイベントで、糸魚川から大町まですべて参加できる連携日程になっています。また、ゴールデンウィークでなくても楽しめるよう、「塩の道トレイル」として、街道120kmを併走するJR大糸線の拠点駅ごとに11区間に分けたコース設定が設けられています。紅ずわいがにや南蛮エビを食べる、3日入ると3年風邪引かないと言われる白骨温泉に入る、雄大な北アルプス山脈を眺める、国宝松本城を巡る、そんなセレクトができる街道です。本格的な登山はちょっと…という方も、さわやかな汗を流しながら、美味しい食事でしっかり塩分を補給する旅、いかがでしょうか。経済の動脈として発展した各地の「塩の道」は現在でも整備されて役割を果たしている道路が多いと言われています。糸魚川と松本間は、高速道路と連携して広域な地域を結ぶ地域高規格道路として、「松本糸魚川連絡道路」の計画が進められています。新潟県総務管理部長(元財務省広報室長)佐久間 寛道松本60 ファイナンス 2018 Jun.連 載 ■ ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る