ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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市民主体のまちづくり・湖南市湖南市総合政策部理事 水谷 剛1 派遣自治体の概要湖南市と聞いてどこにあるか、どのような市かご存知の方はいらっしゃるでしょうか。残念ながら全国的にはあまり知られていないようで、関東だと漢字が似ている「湘南(しょうなん)」と読み間違えられることも多いので、本稿を通じて湖南市について少しでも知っていただければ幸いです。湖南市の「湖」は琵琶湖であり、琵琶湖の南にあるので「湖南市」です(琵琶湖には面していませんが…)。湖南市は、忍者で有名な滋賀県甲賀郡の旧甲西町と旧石部町の2町が2004年10月1日に合併して誕生しました。現在の人口は約5万5千人、面積は約70km2です。古くは東海道五十三次の51番目の宿場「石部宿」が置かれ、現在は名神高速、国道1号線が通っており、大阪・名古屋から100km圏内に位置する東西交通の要衝となっています。こうした地の利を背景に、高度経済成長期の1968年に西日本最大規模の湖南工業団地が造成され、多くの企業が進出し工業のまちとして発展してきました。これに伴い、1970年に2万人弱であった人口が1995年には5万人超となりましたが、1995年あたりから人口の伸びが鈍くなり、2005年に5万5千人でピークを迎え今後減少することが予想されています。2015年の高齢化率は21.5%と全国平均より低いですが、今後、湖南工業団地への企業進出とともに移住してきた世代が65歳を超え、高齢化率が急速に高くなると見込まれています。2 自治体の取組みの紹介湖南市では、人口減少・少子高齢化に対応するため、市民の意見を踏まえつつ2015年10月に総合戦略を策定し、総合戦略に沿って転出抑制・転入増加や出生率向上に向けたさまざまな取組を進めてきております。私の役割は、地方創生の旗振り役として、各部局の政策をとりまとめ、国の交付金を活用しつつ総合戦略を推進することです。全体の戦略としては、本市の中心産業である製造業のさらなる発展を目指しつつ、第1次、第3次産業の振興を図るとともに、市民主体のまちづくりを進め、市民の郷土への愛着を醸成し移住定住を促進することとしています。本稿では、さまざまな地方創生の取組のうち市民主体のまちづくりの取組について紹介します。湖南市で勤務して感じるのは、国に比べて法令や予算の権限が限られているため、施策を市民に理解してもらい、市民を巻き込むことが成功の鍵となることです。以下では、こうした市民を巻き込んだ特徴的な取組を紹介させていただきます。ア.地域自然エネルギー湖南市では、1997年に全国初となる事業型市民共同発電所が稼働して以来、自然環境とエネルギーに関する取組のパイオニアとなっております。2012年には、自然エネルギーは地域固有の資源であるという理念の下、全国に先駆けて「湖南市地域自然エネルギー基本条例」を制定しました。条例に基づいた取組とし湖南市の風景湖南工業団地紅葉の名所・湖南三山54 ファイナンス 2018 Jun.

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