ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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2. ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)CMIMの支援を実施するに際しては、ASEAN+3域内経済のリスクを早期に発見し、改善措置の速やかな実施を求めていくことが必要不可欠である。このプロセスに貢献するためのサーベイランス機関として、AMROが2011年4月に設立された(2016年2月に国際機関化)。今回の会合では、独立した信頼性の高い国際機関として、AMROが、サーベイランス能力を高める努力や、CMIMの発動を支援する努力を継続的に実施してきていること、そして、引き続きそうした努力を支援していくことが確認された。3.アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)アジア通貨危機の更なる教訓として、1997年当時のASEAN諸国の金融手段が短期の銀行融資に偏在していたことや自国内の貯蓄が自国内の投資に充てられなかったことが挙げられる。これを踏まえ、ASEAN+3域内現地通貨建て債券市場を育成する取組みが進められている。今回の会合では、(1)ASEAN+3域内で、債券発行による資金調達が困難な企業の信用力を高め、現地通貨建て債券発行を円滑化するために、現地通貨建債券に信用補完を行う機関である信用保証・投資ファシリティ(CGIF)の増資決議(7億米ドルから12億米ドルへの増資)が歓迎された。これにより、CGIFの保証可能額は、17.5億米ドルから30億米ドルに拡充される。(2)クロスボーダー取引の活性化を主眼に官民の専門家で市場慣行の標準化や規制の調和化を議論する場であるASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)へのモンゴルの参加が承認された。これはASEAN+3の知見を域外に共有していくという点において意義深い成果と考えられる。3災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)設立合意式典東南アジア、特に低所得国では、様々な自然災害によって持続的な経済成長が妨げられるリスクが高い。日本は、自国での経験も踏まえ、金融セーフティネットに加えて、自然災害セーフティネットの構築にも注力している。この一環として、今般、日本のリーダーシップにより、SEADRIF(Southeast Asia Disaster Risk Insurance Facility)の設立が合意された。SEADRIFの最初の成果は、ラオス、ミャンマーが参加する災害保険会社のシンガポールにおける設立である。SEADRIF災害保険会社は、アジア初の地域災害リスクプールであり、ラオス、ミャンマーの災害リスク(主に洪水)を補償し、再保険市場へリスクを移転するもので、保険金は、事前に合意したトリガーに基づき、迅速に被災国へ支払われる。今後、2019年の設立・稼働に向け、日本・世界銀行による資金支援・技術支援の下、関係国及び世界銀行にて詳細を検討していくこととなっている。ADB等他の国際機関との連携の可能性も探る。4二国間通貨スワップ(BSA)現在、日本は、ASEAN+3の多国間の取組みであるチェンマイ・イニシアティブを補完する金融セーフティネットとして、主要なASEAN諸国と二国間通貨スワップ(BSA)を締結している。昨年、横浜で開催された日ASEAN財務大臣・中央銀行総裁会議において、日本は、ASEAN諸国に対し、円での引出しも可能とした新たなBSAの創設を提案した。2017年10月には、フィリピンとの間で、従来の取極を新型BSAに切り替えた。更に、今回のマニラ会合の機会に、シンガポール、インドネシアとの既存BSAについて、ドルに加えて円での引き出しを可能とする取極に切り替えることに概ね合意した。この新型BSAは、中期的にアジアのドル依存の低減を促し、域内の金融安定に貢献すると期待される。以 上第21回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議のフォト ファイナンス 2018 Jun.33

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