ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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国際局地域協力課長 高村 泰夫/企画係長 生田 駿至/企画係 澤田 亮太郎フィリピン・マニラで開催された第51回ADB年次総会に併せて、アジアにおける地域金融協力関連の会議として、第18回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議、第21回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議、災害リスク保険ファシリティ設立合意式典が開催された。以下、本稿では、これらの会議における議論の概要等を紹介したい。1第18回日中韓財務大臣・中央銀行 総裁会議5月4日(金)、日本の議長の下、第18回日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議が開催され、日本からは麻生副総理兼財務大臣、黒田日本銀行総裁が出席した。各国の経済・金融情勢および地域金融協力について意見交換を行い、3カ国で引き続き協力していくことを確認した。2第21回ASEAN+3財務大臣・中央 銀行総裁会議5月4日(金)、韓国とシンガポールの共同議長の下、第21回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議が開催され、日本から麻生大臣・黒田総裁が出席した。会議では、ア.経済情勢に関する政策対話、イ.地域金融協力の強化の2点について議論したが、その概要は以下の通りである。ア.経済情勢に関する政策対話についてASEAN+3経済は、域内の強靭な国内需要、好調な輸出、安定的なインフレを背景に、持続的に成長しているものの、下方リスクとして、保護主義の拡大、想定よりも早い金融引き締め、地政学的な不安定性を認識した。また、4月27日の南北首脳会談で合意された「板門店宣言」を歓迎するとともに、地政学的リスクの緩和に向けた更なる進展を期待することとされた。イ.アジアの地域金融協力について1.チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)1997年に発生したアジア通貨危機を教訓に、急激な資本流出による危機が生じた国を支援し、危機の連鎖と拡大を防ぐ枠組みとして、2010年にCMIMが発効した。CMIMは、これまで実際に発動されたことはないが、IMFとの合同テストランを実施する等、機能改善のための議論が続けられている。この1年は、5年に1度実施される契約書の見直し作業について議論が行われてきた。CMIMには、IMFとの協調支援を行うポーション(IMFリンクポーション)とCMIMが単独で支援を行うポーション(IMFデリンクポーション)があるが、今回の契約書見直し作業では、IMFとの合同テストランの結果を踏まえ、IMFリンクポーションの実効性や即応性の改善が主なテーマとなった。具体的には、ア.IMFとCMIMで支援期間は異なっているが、CMIMのスワップの更新回数やディスバースのタイミングを柔軟化することにより、CMIMがIMFと歩調を合わせて支援しやすくすること、イ.CMIMとIMFとの間で早期の情報共有を容易にする枠組みを策定すること、ウ.それぞれのコンディショナリティの整合性を確保すること等について、契約書の改訂をすることに合意した。できるだけ早期のCMIM契約書改定発効を目指して、本年内に契約書改訂の文言を確定させることに合意した。アジアの地域金融協力関連の 会議について32 ファイナンス 2018 Jun.

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